綿津見も知らない
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「このどーみても麺柔らかめのラーメン!! うんめーっ!」
「このカレーの粉っぽさがたまらないわぁっ」
「このタコライスのアボカド熟しすぎ! おいしい!」


 輝二くんにそれ、ホメてるのか? と言われたけども、だって、今までまともなもの食べてこなかったんだもん。こんなチープな味でも、ものすっごいおいしかった。


「ごちそーさまでした! んじゃ、そろそろ行くか!」


 お腹いっぱいだあ。
 皆も立ち上がって、お店を出る準備をする。――けど、その様子を見たトーカンモンさんたちは驚きまくって、わたしたちを引き止めた。


「ま、まだ帰るには早すぎます!」
「んだよ、もう食えねーぞ」
「あ、分かった! 変な高いツボの押し売り」
「ちょっと想黙れ」


 拓也くんには怒られたけどさあ。え、詐欺とかでありそうじゃない?
 店側がタダで何かをしてあげるけど、最後のほうには布団とかツボとか無理やり買わせる、ってヤツ。
 トーカンモンさんたちは、どうしてかわたしをヘンな目で見た。わたし、何もへんなこと行ってないけど。


「せっかく海にやって来たんですから、まだまだ、海を楽しんでもらわないと!」
「夏と言えば海、海といえば海の家!」
「ああ、貸し出しね!」
「え、あ、は、はい……。海の家セット一式です!」


 わあ泉ちゃんバッサリしてるう。
 トーカンモンさんたちの背後の白いカーテン開く。そこには水着やらボートやら、浮き輪やらがいっぱいあった。


「想! 行きましょう!」
「あ、うん……」


 わたしは泉ちゃんに手を引かれて、更衣室に行った。



「わ、いっぱいあるね」
「想はこれにしなさい。グラドルっぽいわ。輝二とか、多分こういうの好きよ」
「えっ」


 泉ちゃんがそう言ってわたしに渡したのは、旧タイプのスクール水着だった。しかも、白いやつ。どういうセンスだ! だいたい、泉ちゃんの中の輝二くんのイメージひどすぎるし……!
 あ、明らかに泉ちゃんわたしで遊んでるよ……。泉ちゃんは本人は、レースクイーンっぽいのとか、真っ赤なビキニとかを選んで悩んでいた。


「ていうか、わたし泳げないや。犬かきしか」
「……微妙ねそれも。あたしが泳ぎ教えたげるわ。想も着替えて、着替えて!」


 泉ちゃんはそう言ったけど、えっ……。
 女の子同士とはいえ、人前で脱いだりとか恥ずかしいよ、大体わたし泉ちゃんみたいな体型じゃないし……!
 一応、水着は選んだけど、うう、着たくない。

 だけど、しぶしぶわたしは服を脱ごうとした。――だけど。


「ああああっ!」
「? どうしたのよ、急に」
「で、デジヴァイス……忘れちゃった。お店のなか……」
「え!? 早く取りに行きなさい!」
「は、はーい……」


 うう、わたしダメだ。テーブルのうえに、置きっぱにしちゃってたんだった。
 わたしは更衣室を出て、砂浜を駆けていってお店の中へ。
 でも、テーブルには何もなかった。落としたのかと思って床を見たけど、何もない。
 まさか、なくしちゃった――!?


「うわあ、どうしよ……って、トーカンモンさん!?」


 トーカンモンさんのうちの一体が、わたしのデジヴァイスっぽい機械を持って歩いてるのが見えた。どういうことなの。
 わたしは、そのトーカンモンさんのいる林に向かって、走った。


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