綿津見も知らない
わたしたちは島を歩いていく。太陽はぎらつき大地を照らしている。空は透きとおった青色で、そしてそこに浮かぶは真っ白な雲。真夏だ。[1/5] イカしたビースト進化! カルマーラモン あつくて暑くて、ただ歩くだけでも少し汗ばんでくる。 「この島、常夏だなー」 「うん、夏だね!」 やっぱり、夏と言えば! 皆の声がかさなった。 普段は冬が好きだけど、久しぶりのこんがりとした太陽の日差しはやっぱり懐かしくて嬉しかった。 「海ー!」 「ヒトデっ!」 「紫外線!」 「ね、熱中症、」 ザ・夏の風物詩大会。 私はやっぱり熱中症が怖いなあって思うけど、って、なんか、視界が……。あたまぐらぐらする。目まいまだ治ってない。 「ぎゃーっ! 想さんが!」 「あーほらほら、しっかりしろ!」 拓也くんが、わたしの肩を支えた。やっぱり、拓也くんは面倒見がいいな、すごいなあ。――なんか、あの人みたいだ。 「ありがとう。拓也くん、お兄ちゃんみたい」 「……オレとお前、同い年なんだけど」 性格がぜんぜん違うのに、拓也くんはあの人に似ていた。あの人も、昔こうして支えてくれたなあ、なんて。 拓也くんはどうしてか呆れ顔だったけど、わたしは嬉しかった。 「夏はやっぱり、海だよな!」 拓也くんは、海を見つめた。いいなあ。実はわたし、海水浴なんて1、2回くらいしか行ったことなかったりする。 ……すこし泳いでみたいな。 「おい、油断している暇はないぞ、奴らは俺たちを狙ってきているんだ」 「えっ」 こんなところで遊んでるヒマはないぞ、と輝二くんは続けた。わたしは一瞬涙目になった。 「まーまー、カタいこと言うなって! てか想泣くなよ」 「そーだよ! ほら、お前のせいで想ちゃんも泣きそうだぞ」 「え、別にわたしはそういうアレじゃ……っ」 「し、しかし……っうわ、やめろ!! 想、泣くなっ!!」 輝二くんが、拓也くんと純平さんにくすぐられまくってる。 というかわたし、また勘違いされちゃった。わがまますぎるだろわたし! で、でも、なあ―― 「せっかく、海に来たのに」 「来たのに……」 友樹くんとわたしとで、どんよりモードになった。 少しくらい、遊びたいな、って思っただけなのに。あ、でもこれだったら、よけいわたしが海に行きたいよって催促してるみたいだった。 「あ、あのね。別にわたしは海に行きたいなーって催促してるわけじゃ」 「想、それ逆効果だってば」 「あ」 泉ちゃんがつっこんで、輝二くんが呆れてわたしを見る。 そういうわけで、輝二くんが折れて海でしばらく遊んでいくことになった。日曜日のパパさん状態ね、と泉ちゃんが呟いて、なんかおかしかった。 「デジタルワールドにも海の家ってあったんだ」 少し歩くと、海の家が見えてくる。看板には、トーカン天国と書かれていた。 海の家からは、トーカンモンさんっていう鳥っぽいデジモンさん×4が出てくる。――店の名前安直だなあ。 「今ならお一人様十万デジポッキリ!」 「ぼ、ぼったくり!」 「……と、言いたいところですが、今日は店の一周年記念! すべてタダでご奉仕させていただきます!」 な、なんだってー。 というわけで、わたしたちは海の家でご飯を食べることになった。……ちょうどお腹空いてきたな。スイカ食べたい。 NOVEL TOP ×
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