雷鳴に向かって
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「スネークアイブレイク!」


 グロットモンのハンマーが純平たちに降りかかる――そのときだった。


「ジェットアロー!」


 強い水圧がグロットモンの体を打つ。この状況下で水の技が使えるデジモンは、ラーナモンでもなく、ホエーモンしかいない。
 そのホエーモンの激しい噴水と共に、ビーストスピリットが浮かび上がる。


「ホエーモン!! これは、ビーストスピリット……?」
「あれは、あのときの……」


 あのとき食べてしまった、ビーストスピリット。光る海草とは、このビーストスピリットの放つ光のことのようだった。
 ――スピリットが純平を呼んでいる。グロットモンがスピリットを奪おうとした、だが、純平は叫んだ。


「ビーストスピリットー!!」


 デジヴァイスから目も眩むような光が放たれ、スピリットが純平のデジヴァイスに吸い込まれていく。デジヴァイスの液晶に浮かぶは、雷の闘士のマーク。

「スピリットエボリューション!」

「ボルグモン!」


 ビーストという名どおりの獣のような雄叫びのあとに、純平はボルグモンへと進化した。それはヴリトラモン、ガルムモンに続き三人目のビーストの闘士だった。
 伝説の闘士、雷のボルグモン。それは戦車を思わせるようなデザイン。


「アルティメット・サンダー!」
「せ、制御するのでござる!!」


 純平はヴリトラモン、ガルムモン同様に、ボルグモンを制御しきれなかった。シキモンが自分の傷をさすりながら、ボルグモンに訴えるが――その声は届いているのか、いないのか分からなかった。
 洞窟がどんどん崩れる。


「まずいな、制御できないんだ!!」
「アグニ、ヴォルフ!! 参ろうぞ!」


 シキモンはアグニモン、ヴォルフモンを抱えて、ペタルドラモンから脱出する。シキモンは怪力だった。
 ――残されたペタルドラモンは、降ってきた岩石の下敷きになった。


「グロットモン! 貴様だけは許さん!」


 しばらく暴れて、ようやく制御できたのだろうか――ボルグモンが、グロットモンを睨んだ。
 頭の上の砲台をグロットモンに構え、ピントを合わせる。グロットモンの怯える表情が砲台の窓から写る。
 そしてボルグモンはなんの躊躇いもなくその技を放った。


「フィールドデストロイヤー!」
「ギャアアァァ!」


 グロットモンの断末魔が洞窟にこだました。グロットモンにコードが浮かぶ。
 ボルグモンは、ブリッツモンにスライド進化すると、デジヴァイスを手に持った。


「悪に染まりし魂よ、我が雷が浄化する! デジコードスキャン!」


 完全に、グロットモンの姿は消滅し、たまごが空に消えていく。
 そして残されたフェアリモンのスピリットは、泉のデジヴァイスに戻っていった。


「Commozione! ……純平!!」


 泉は、傷ついた純平の元へ駆け寄る。


「……よかったね、泉ちゃんのスピリットが戻って」
「……純平っ」


 泉は瞳を潤ませ、微笑んだ。
 グロットモンを倒せて、喜んだのもつかの間――突然に地響きが起こり、拓也が逃げろと叫ぶ声がきこえ、拓也、輝二、想が走ってくる。想は走るのが遅いため、二人に手を引っ張られての状態だった。
 海水があっという間に押し寄せてきて、辺りが何も見えなくなる――


「ボクたち、死んじゃったの?」
「そんなことはないと思うけど――」
「わたし、三途の川行くのって久しぶりだよ」
「想さんが幻覚見てる!!」
「つか行ったことあんのかよ!」
「さんずのかわ――本には書いてないはずまき」
「え〜、それっておいしいのー?」
「三途の川――俺も一度見てみたかったんだ」
「……お前ら、(特に想と輝二)頭大丈夫か?」


 上から友樹、泉、想、再び友樹、純平、ボコモン、ネーモン、輝二、拓也。カオスな会話を繰り広げていると、視界が開けて、自分たちはホエーモンの口の中にいたのだと悟る。


「もう少しで島だよお!」


 ホエーモンは、島を目指して海を渡るのだった。



110818
→ムダに長いおまけの輝二夢。

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