雷鳴に向かって
「スネークアイブレイク!」[4/5] グロットモンのハンマーが純平たちに降りかかる――そのときだった。 「ジェットアロー!」 強い水圧がグロットモンの体を打つ。この状況下で水の技が使えるデジモンは、ラーナモンでもなく、ホエーモンしかいない。 そのホエーモンの激しい噴水と共に、ビーストスピリットが浮かび上がる。 「ホエーモン!! これは、ビーストスピリット……?」 「あれは、あのときの……」 あのとき食べてしまった、ビーストスピリット。光る海草とは、このビーストスピリットの放つ光のことのようだった。 ――スピリットが純平を呼んでいる。グロットモンがスピリットを奪おうとした、だが、純平は叫んだ。 「ビーストスピリットー!!」 デジヴァイスから目も眩むような光が放たれ、スピリットが純平のデジヴァイスに吸い込まれていく。デジヴァイスの液晶に浮かぶは、雷の闘士のマーク。 「スピリットエボリューション!」 「ボルグモン!」 ビーストという名どおりの獣のような雄叫びのあとに、純平はボルグモンへと進化した。それはヴリトラモン、ガルムモンに続き三人目のビーストの闘士だった。 伝説の闘士、雷のボルグモン。それは戦車を思わせるようなデザイン。 「アルティメット・サンダー!」 「せ、制御するのでござる!!」 純平はヴリトラモン、ガルムモン同様に、ボルグモンを制御しきれなかった。シキモンが自分の傷をさすりながら、ボルグモンに訴えるが――その声は届いているのか、いないのか分からなかった。 洞窟がどんどん崩れる。 「まずいな、制御できないんだ!!」 「アグニ、ヴォルフ!! 参ろうぞ!」 シキモンはアグニモン、ヴォルフモンを抱えて、ペタルドラモンから脱出する。シキモンは怪力だった。 ――残されたペタルドラモンは、降ってきた岩石の下敷きになった。 「グロットモン! 貴様だけは許さん!」 しばらく暴れて、ようやく制御できたのだろうか――ボルグモンが、グロットモンを睨んだ。 頭の上の砲台をグロットモンに構え、ピントを合わせる。グロットモンの怯える表情が砲台の窓から写る。 そしてボルグモンはなんの躊躇いもなくその技を放った。 「フィールドデストロイヤー!」 「ギャアアァァ!」 グロットモンの断末魔が洞窟にこだました。グロットモンにコードが浮かぶ。 ボルグモンは、ブリッツモンにスライド進化すると、デジヴァイスを手に持った。 「悪に染まりし魂よ、我が雷が浄化する! デジコードスキャン!」 完全に、グロットモンの姿は消滅し、たまごが空に消えていく。 そして残されたフェアリモンのスピリットは、泉のデジヴァイスに戻っていった。 「Commozione! ……純平!!」 泉は、傷ついた純平の元へ駆け寄る。 「……よかったね、泉ちゃんのスピリットが戻って」 「……純平っ」 泉は瞳を潤ませ、微笑んだ。 グロットモンを倒せて、喜んだのもつかの間――突然に地響きが起こり、拓也が逃げろと叫ぶ声がきこえ、拓也、輝二、想が走ってくる。想は走るのが遅いため、二人に手を引っ張られての状態だった。 海水があっという間に押し寄せてきて、辺りが何も見えなくなる―― 「ボクたち、死んじゃったの?」 「そんなことはないと思うけど――」 「わたし、三途の川行くのって久しぶりだよ」 「想さんが幻覚見てる!!」 「つか行ったことあんのかよ!」 「さんずのかわ――本には書いてないはずまき」 「え〜、それっておいしいのー?」 「三途の川――俺も一度見てみたかったんだ」 「……お前ら、(特に想と輝二)頭大丈夫か?」 上から友樹、泉、想、再び友樹、純平、ボコモン、ネーモン、輝二、拓也。カオスな会話を繰り広げていると、視界が開けて、自分たちはホエーモンの口の中にいたのだと悟る。 「もう少しで島だよお!」 ホエーモンは、島を目指して海を渡るのだった。 110818 →ムダに長いおまけの輝二夢。 NOVEL TOP ×
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