おわりのはじまり
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「これは、ある世界のお話だよ」


 大好きだったあの人のお話に、耳を澄ましていたあの時。
 親友と手をつないで遊んでいたあの時。
 三年経てば、わたしには、もうそのどちらも残っていなかった。



 本に栞を挟んで閉じる。読み終えてしまえば、物語は終わる。物語の人々のその後は描かれていないから、わたしは色々なことを思う。
 ハッピーエンドのその後も、本当に幸せな日々が続いたのか。ずっと、幸せだったままなのか。友達と外で遊ばず、本ばかり読んでいるわたしは、物語の続きばかりを考えている。
 わたしは自分に自身がなくて、いつもうじうじしている。だから余計に、空想にばかり耽ってしまうのだ。ある意味それは現実逃避なのかもしれないなあ、と思う。

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