ふしぎな
ビルの上から飛び降り自殺をする人は落下しているなかで気を失うので痛みはまるっきりない――とかいうのを聞いたことがあるけれど、それが本当かどうかは分からない。でもわたしは、あの高いたかいカラツキヌメモンの山から落下して気を失った。[1/2] 太陽の光がまぶたの裏側にたっぷり流れこんできて、眩しさに目を開く。身体を起こして辺りを見渡しても、辺りを見て分かったのは、ここは丘だということだけで、周囲には誰もいなかった。 (ああ、わたしだけ一人で落ちてきちゃったんだった) デジヴァイスはあるものの、わたしは進化することができない。敵に遭遇してしまったらどうしよう……意外とデジタルワールドは物騒だ。 とりあえず、皆と安全そうな場所を探そう。わたしは立ち上がって、スカートに付いた砂ぼこりをはらった。 「ここ、どこなの……」 うう、わたし、あほの子だ。さっきのところに大人しくいればよかった。 丘を下って歩いていると、気付けば草がぼうぼう生えている原っぱにいた。そこまではいいんだけど、草はわたしの背丈よりも少し大きいくらいで、つまりは目の前にはひたすら緑が広がっていて何がなんだかわからない状態。 最初は膝よりも下あたりだったのに、歩くうちに草はどんどん高さを増していったのだった。引き返そうとしても、もう四方八方に背の高い草があってそれすらも難しく思える。 ためしにデジヴァイスでなんとかならないかなあ――とか思って、わたしはそれをポケットから取り出した。 「ん、色?」 すると画面には色? みたいなマークが表示されていて、デジヴァイスからは急に光が伸び始めた。 もしかしてわたしのスピリットだったり――いや、それはないだろうな、うん。ともかく、わたしはその光の射すほうへ歩いてみることにしたのだった。 一生けんめい歩いた先にいたのは、女の人みたいで、下半身がヘビなデジモンだった。デジモンはそれまでぼーっとそこにいただけだったけど、ふとわたしの存在に気づいて、わたしを見つめた。 どうしよう。なんかいけないコワいデジモンだったりとか、するのかな、殺されたりとかするのかな――。 そこまで考えてわたしは涙目になった。デジモンは口をぽかんと開けてわたしをじっと見つめていて、わたしはそのスキに逃げようかと思ったんだけども、デジモンはついにわたしに声を掛けた。 「わ、人間のコドモだ。連れてってあげるからお帰り」 「えっ」 追いはぎ、とかじゃなくて!? それに驚いたわたしのほうこそ、むしろさっきのデジモンさんみたいに口がぽかーんだった。 「というか、あなた何者ですか……?」 「んー、通りすがりの美人すぎるデジモンAだねぇ」 デジモンさんはあっさりとそう言いのけた。いや、確かになんかべっぴんさんな雰囲気のあるデジモンだけど美人すぎる〜ってフレーズはなんか違和感あるし。な、なんか変わってるよ、このデジモンさん……。 デジモンさんはわたしの両脇を捕らえると、しゅるしゅると移動を始めた。 NOVEL TOP ×
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