ノイズに変わって奪われる
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 デジヴァイスを手にすると、不思議と力が流れてくるような気がした。そして、皆は高らかに叫ぶ。


「色は世に。世は、すべてに!!」

「ハイパースピリット・エボリューション!!」

「カイゼルグレイモン!」
「マグナガルルモン!」


 皆の勇気、受け取った!! そう叫ぶと、二体は待ち構えているロイヤルナイツたちに向かっていく。
 わたしは、ロイヤルナイツの方を見た。


「デュ、デュークモン……!! 貴様……!!」

 デュークモンをきっと睨みつけ、今にも跳びかかりそうになったデュナスモンを、ロードナイトモンは制する。

「待て。奴らを倒せさえすれば、人間界のキーは我等の手に入るのだぞ」
「ち……っ」
「夢、それは我等の夢だ……! しかし、ルーチェモン様を……信じて良いものか」


 ロードナイトモンは、どうしてか一瞬躊躇する。
 デュナスモンは人間界に行ける、とルーチェモンを盲信しているようだけれど、ロードナイトモンは違うのだろうか。……でも、どちらにせよルーチェモンに加担している点で彼は悪だ。

「ふん。行くぞ、ロードナイトモン!!」

 そして、デュナスモンとロードナイトモンがついに襲いかかってきた。
 けれど、デュナスモンは、まず、カイゼルグレイモン・マグナガルルモンたちよりも奥にいたデュークモンに飛び掛かった。
 デュークモン! とデュナスモンは叫び、拳を振るった。爆風のように砂埃が舞い上がる。途端に視界がけぶった。


「剣呑だな、デュナスモン……!」
「デュークモン! かつてのお前の矜持は、誇りは何処へ消え去った!?」


 デュナスモンは、きっとデュークモンさんを見るたびにこのようにして問い詰めてくるのだろう。きっと、デュナスモンは、かつてはデュークモンさんをとても信頼していたはずだ。
 デュークモンさんは、力を込めるように剣をはらう。


「私も、君も、変わってしまったのだ。果てない時によって。既にこの身は亡霊と化したも同然よ」
「忌々しい……!! ロードナイトモン!! 俺は、このガキ共よりも、まず先にコイツを倒さねばならん!」


 ロードナイトモンは好きにするが良い、と言って笑った。そして、マグナガルルモンに反撃をし始めた。二体は空中で戦闘を始め、時折攻撃が放たれて月面が削れる。

「なあ、かつての盟友よ。己の正義に生きてきた事の顛末が、これで良いはずがなかろう。遙か古代、この世界は十闘士と世の闘士に護られた。今、ここに起こっていることは、まさに神話時代の再来なのだ!」
「貴様……! この期に及んで、かつての神話を語って何になるというのだ!!」

 意見のぶつかり合い。この二体に今まで何があったのかなんてわたしは分からない。けれど、デュナスモンはきっとデュークモンさんを赦しなどはしない。
 わたしは、ふとカイゼルグレイモンを見た。カイゼルグレイモンは、クレーターの陰から飛び出した。


「……お前らが争ってる場合じゃねえんだよ!!」

 カイゼルグレイモンが、デュナスモンに殴りかかる。
 デュークモンと、デュナスモン、そしてカイゼルグレイモン。
 マグナガルルモンと、ロードナイトモン。
 それぞれの戦いが、繰り広げられていた。

「ガキが、小賢しい真似を……!」
「へっ。お前らのしてることに比べりゃこんなんどーってことねえよ! デュークモン! てめえには後で言いたいことが山程ある! だが、先にデュナスモンから片付けてやるぜ!」

 そう言ってカイゼルグレイモンはデュナスモンに剣を振るう。不意打ちだったということ、カイゼルグレイモンが力をつけていたということもあり、デュナスモンは剣をうまく返すことができずに圧されている。

「ば、馬鹿な……!!」

 デュナスモンが圧されたことにより、急に戦闘の対象外となったデュークモンさんはそれぞれの戦いから離れた、上空に浮かび上がる。
 わたしは、そんなデュークモンさんを睨みつけた。ここで行われているのは、生命のやり取りだ。彼は、それをどう思っているのだろうか?


「ハアアアァッ!」

 マグナガルルモンが光の弾を打ち放ち、ロードナイトモンはかろうじてそれを避けていく。月にはどんどんクレーターが生まれる。
 ただ、ロードナイトモンも負けじとマグナガルルモンに必殺技を放つ。その攻防がしばらく続いた末、ついにマグナガルルモンはロードナイトモンを捉えた。
 そして、その二体のいたところを核として光が爆発する。ロードナイトモンだけはその光の爆発の中に取り残され、マグナガルルモンは跳び退いた。


「ウ、ウガアアァアッ!」
「ロ、ロードナイトモン!」

 ロードナイトモンに、デジコードが浮かび上がった。


「一緒に人間界に攻め入ると約束したのに……! よくも、我が同胞を!!」

 わたしには、理解できない。理解できないけれど、きっと、同じ目標を志す彼らには言葉では言い表せないような深い友情があったのだろう。
 デュナスモンは高ぶる感情のままに、叫んでいる。


「おい、デュークモン!! これが、貴様の求める正義だと言うのか!!」
「……」

 デュークモンさんは、黙っていた。どうして、どうして。
 彼が何を考えているのか、この場にいた誰ひとりとして理解できないだろう。
 痺れを切らしたデュナスモンは、貴様もまとめて滅ぼしてやる、と言って咆哮した。ーーあれは、大きな技を放つ構えだ。

「ブレス・オブ・ワイバーン!!」
「九頭龍神!!」

 けれど、デュナスモンの動きを察したカイゼルグレイモンが、対抗して剣を月面に突き刺した。そして、飛竜と、炎がぶつかり合った。
 ーーやられたのは、飛竜のほうだった。ロードナイトモンが倒れたのと同じように、咆哮もむなしくデュナスモンにコードが浮かび上がる。

「デュナスモン……!」

 ロードナイトモンが、最後の気力を振り絞ってデュナスモンに歩み寄る。
 その姿が痛々しくて、わたしも心がつらくなったけれど、浄化しなくてはいけない。そう思い至った瞬間、だった。デュークモンさんが「……来る」とつぶやいた。


「僕のものだ……!! グランド・クロス!!」

 わたしは、何が起きたのか一瞬理解できなかった。
 突如ルーチェモンが姿を現し、たくさんの恒星が見えた。その無数の恒星が爆発して、そしていま戦いのあった地にぶつかる。
 そして、その中心部にいた彼らは、いとも簡単に吹き飛ばされてしまった。

「カイゼルグレイモン!」
「マグナガルルモン!!」


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