ノイズに変わって奪われる
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「……ついに、辿り着いたようだね。伝説のスピリットを受け継ぐ子どもたちよ」
「……!!」

 紅のマント。硝子のような光沢の白い鎧。この黄金の月と同じ、瞳。
 振り返った先にいたのは、デュークモンさん、だった。
 花々に囲まれ、彼は立っていた。

「デュ、デュークモン!!」
「……待っていたよ、闘士たちよ」

 拓也くんが叫び、輝二くんが素早くデジヴァイスを構える。
 その二人の様子を見ても、デュークモンさんは一切動じることはなかった。


「ここが、最後の地になるだろう。……まもなく、彼らがやって来る」
「な、なんで今さら……」

「そうだぞ、今さらのこのこ現れやがって!」

 友樹くんは怯えて、純平さんはデュークモンさんを睨みつけた。
 デジタルワールドは既に崩壊した。生き残っているデジモンも残り僅かだ。
 しかし彼は、そんなことなど関係無いとでもいうように、まるでそこに自分が存在するのが当然であるかのように世界に佇んでいる。


「デジタルワールドは、消滅した。ルーチェモンによって」
「けれど、まだできることはある。そう思って、あなたはこの地にいるんでしょう!?」

 哀しみ、怒りが絵の具のように混ざって苦しくなる。わたしは、震える手を抑えてデュークモンに怒鳴る。

「ついにデジタルワールドに残るは、この三つの月だけとなった。想の言うとおり、このデュークモンには一つの目的がある」
「それは一体なんだ……!!」
「焦るな、闇の闘士よ。何、もうすぐ、やって来るさ」


 その時、だった。
 抱えていた赤ちゃんたちが、急に「きた、きた!」と騒ぎ始める。


「う、うわああん!!」
「ど、どうしたの!?」
「……きた!」
「ロイヤルナイツの、デュナスモンとロードナイトモンです!」

 ロップモンが振り向き、そしてパタモンが叫ぶ。
 デュークモンさんは、こうなることを予想していたのだろうか。

「……流石、と言ったところだね、元・三大天使は」
「そんな呑気に言ってる場合じゃないのよ、今は!!」

 泉ちゃんは拳を握りしめ、デュークモンさんに叫ぶ。
 ロイヤルナイツが、近づいている。緊張感がせまり、赤ちゃんデジモンたちは、泣き叫ぶ。


「どうすんの? たたかいますか? しませんか?」


 そして、プロットモンは、天啓を受けたかのようにわたしたちに向き直る。そして、問う。戦うか、否か。
 ーーわたしは、選んでこの世界に来たわけじゃなかった。小さな頃から病弱で、友達も少なかった。唯一心から打ち解けられた友達は、わたしが階段から突き落としてしまった。
 いつしか、本ばかり読んで過ごすようになっていって、わたしは、少しずつ同学年の子から遠ざかっていく。でも、デジタルワールドに来るまでは、それを悪いことだとは思ったことがなかった。
 ーーデジタルワールドに来てからは、すべてが変わった。わたしは、この世界にきてから、生命を懸けて闘うこと、自分の力で生きることを、知った。
 自分の足で歩いて、生きるために、闘うために、わたしはもがいていた。
 きっと、輝二くんは最初から覚悟できていた。だから、いつだって、真っ直ぐで。いつしかわたしも、その隣に立っていたいと願うようになった。
 すべては、想うことからはじまる。闘う勇気も、信じるための祈りも、ぜんぶ。
 そう、きっといちばん大事な武器は、心にあるんだ。
 

「……そう、デジタルワールドでしか手に入らない、何かがあるように思えたから」
「いや、思えたんじゃない。あったんだ」
「ああ、あった。具体的に何とは言えないけれど、沢山!」

 拓也くん、輝二くんが語る言葉に、わたしたちは頷いた。
 
「……覚悟を決めたようだな」

 デュークモンさんのその声には、僅かに安堵の色が含まれていた。

「当たり前だろ!! ……ゴールが何で、どこにあるかも分からない。だけど、少なくともここにあるわけじゃない。ここは、あいつらの思い通りにはさせない」
「そうだよな、皆!」
「ああ!」

 だから、わたしは、わたしたちは、今闘うんだ。
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