瞳のなかのリグレット
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 それから疎開の手伝いを終え、わたしたちは純平さんと一緒に、街外れの氷面に行った。
 そこには、友樹くんと輝一くん、それに前はラーナモンのファンだったトーカンモンたちが何かを作っていた。


「あと残ってるのは、あんたたちだけよ!」
「そうか、もうすぐ終わる!」

 ナノモンさんがそう答える。
 拓也くんと輝二くんは、セピックモンさんからロイヤルナイツの動向を伺っていた。
 セピックモンさんはロイヤルナイツの様子を調べた。


「ロイヤルナイツに、向かってくる」
「何が?」
「ええっと、ザンバモン、グリフォモン、プテラノモン、グランクワガーモン、エアドラモン!」

 そんなにたくさんのデジモンさんが、どうして?
 一体何をしようとしているんだ。そう思っていると、セピックモンさんは「ロイヤルナイツと戦う気だ!」と続ける。
 そんな――、彼らだけで戦うなんて、危険すぎる。


「そんな……! ねえ、二人とも!」
「ああ、分かってる!」
「助けに行くぞ!」

 わたしがそう言うと、拓也くんと輝二くんは、すぐにデジヴァイスを構える。
 そして二人は超進化し、カイゼルグレイモンとマグナガルルモンになった。


「皆は、避難を頼む!」
「まかせて!」


 二人は進化するとすぐに、ロイヤルナイツやザンバモンさんたちのいる空へ飛んでいった。


「さあ、駅に行きましょ!」
「うん!」


 泉ちゃんの誘導で、皆は走って町の方へ戻る。
 空では、技のぶつかり合いや、戦いの音が聞こえる。わたしは振り返って、空を見た。
 でも、今、わたしのすべきことはデジモンの皆を連れて行くことだった。
 トレイルモンに乗り込む段になって、セピックモンさんが空をじっと見上げた。


「キミたちの死は、無駄にはしないよ。マイフレンズ……」
「……!」

 ロイヤルナイツに立ち向かっていた、あのデジモンさんは亡くなってしまったのか。
 心が冷えたような感覚になる。どうして争いばかりが続くのだろう。
 セピックモンさんが最後に乗り、そしてトレイルモンの扉は閉まった。そして、トレイルモンは走って行く。
 わたしはぐっと歯を食いしばって、またあの雪面に向かった。


*

 雪面には、友樹くんと輝一くんたちが、頑張って作ってくれたパチンコみたいな機械がある。……これで、ロイヤルナイツの足止めをする、って考えだ。


「……きたです!」


 パタモンが空の先を見て、ロイヤルナイツが向かってくることを伝える。
 わたしたちは、それを合図にして、雪球をセットして、発射の準備をした。
 友樹くんがスコープを覗き込み、輝一くんが発射レバーを持つ。
 わたしからは遠すぎてはっきりとは見えないけれど、カイゼルグレイモンがこっちに気付いてロードナイトモンから飛び退いた。


「今だ!」
「発射!!」

 雪は見事にロードナイトモンに的中する。そこからは流れ作業になって、作った雪球を次々とセットし、発射していった。
 わたしも、どんどん雪球を作っていく。……冷たすぎて手の感覚がなかった。手袋、ほしいなあ。


「……あっ!」
「カイゼルグレイモン……」

 雪球にやられるロードナイトモンに、カイゼルグレイモンが攻めようとしたとき、今度はデュナスモンがカイゼルグレイモンに襲いかかる。
 デュナスモンはカイゼルグレイモンを巻き込んで、街のストーブタワーの方へ行ってしまった。

「パ、パタモン!」
「もちろんです!」

 わたしは、とっさにパタモンを呼んだ。パタモンはこくんと頷いて、街の方を見に行った。

 空では、ロードナイトモンとマグナガルルモンの戦いが始まっていた。


「ダメだ、動きが速すぎて狙いが定められない……」
「このままじゃ、マグナガルルモンが!」
「カイゼルグレイモンが、あぶないです!」

 と、その時、飛んでいったパタモンが戻ってきた。はっとして、わたしたちは機械の向きを変える。
 輝二くんには悪いけれど、今はデュナスモンのほうが先だ……!
 そして、スコープでデュナスモンの位置を確認し、デュナスモン目掛けて雪球を放つ。でも、それは届かなかった。


「あ、そっか、熱だ……!」
「ストーブタワーの熱で溶けちゃう……!」


 ……となると、わたしたちは途端に為す術がなくなってしまった。
 大きな石をここにセットして放てばいい、と思ったけれど、辺りにはそんな石なかった。
 皆は、カイゼルグレイモンを応援し始める。――どっ、どうしよう、このまま応援してるだけなんて!


「た、拓也くん……!」

 わたしがぎゅっと瞳をつむったときだった。
 カイゼルグレイモンは炎を巻き上げ、デュナスモンに飛びつく。もろに炎を喰らったデュナスモンは、地面に倒れ込んだ。
 ストーブタワーの熱が、炎の力を使うカイゼルグレイモンに力を貸してくれた、とか、そういうことかな。


「うッ……!」


 カイゼルグレイモンに安心したのもつかの間、その後ろではマグナガルルモンがロードナイトモンに押されていた。輝二くん……!
 わたしたちは、急いでロードナイトモンに機械の砲口を構える。

「今だ!」
「発射!」
「アージェント……グアアッ!」

 これでマグナガルルモンには当たらなくなった……、と思っていた。でも、その技の矛先はわたしたちのほうに向かってきていて。
 じわじわと、衝撃波が近付く。


「想、輝一ィィ!」


 わたしの目の前に、マグナガルルモンが飛んできて、身体が吹っ飛んで。わたしの頭には、マグナガルルモンの声だけが、響いていた――。
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