瞳のなかのリグレット
[2/3] それから疎開の手伝いを終え、わたしたちは純平さんと一緒に、街外れの氷面に行った。 そこには、友樹くんと輝一くん、それに前はラーナモンのファンだったトーカンモンたちが何かを作っていた。 「あと残ってるのは、あんたたちだけよ!」 「そうか、もうすぐ終わる!」 ナノモンさんがそう答える。 拓也くんと輝二くんは、セピックモンさんからロイヤルナイツの動向を伺っていた。 セピックモンさんはロイヤルナイツの様子を調べた。 「ロイヤルナイツに、向かってくる」 「何が?」 「ええっと、ザンバモン、グリフォモン、プテラノモン、グランクワガーモン、エアドラモン!」 そんなにたくさんのデジモンさんが、どうして? 一体何をしようとしているんだ。そう思っていると、セピックモンさんは「ロイヤルナイツと戦う気だ!」と続ける。 そんな――、彼らだけで戦うなんて、危険すぎる。 「そんな……! ねえ、二人とも!」 「ああ、分かってる!」 「助けに行くぞ!」 わたしがそう言うと、拓也くんと輝二くんは、すぐにデジヴァイスを構える。 そして二人は超進化し、カイゼルグレイモンとマグナガルルモンになった。 「皆は、避難を頼む!」 「まかせて!」 二人は進化するとすぐに、ロイヤルナイツやザンバモンさんたちのいる空へ飛んでいった。 「さあ、駅に行きましょ!」 「うん!」 泉ちゃんの誘導で、皆は走って町の方へ戻る。 空では、技のぶつかり合いや、戦いの音が聞こえる。わたしは振り返って、空を見た。 でも、今、わたしのすべきことはデジモンの皆を連れて行くことだった。 トレイルモンに乗り込む段になって、セピックモンさんが空をじっと見上げた。 「キミたちの死は、無駄にはしないよ。マイフレンズ……」 「……!」 ロイヤルナイツに立ち向かっていた、あのデジモンさんは亡くなってしまったのか。 心が冷えたような感覚になる。どうして争いばかりが続くのだろう。 セピックモンさんが最後に乗り、そしてトレイルモンの扉は閉まった。そして、トレイルモンは走って行く。 わたしはぐっと歯を食いしばって、またあの雪面に向かった。 * 雪面には、友樹くんと輝一くんたちが、頑張って作ってくれたパチンコみたいな機械がある。……これで、ロイヤルナイツの足止めをする、って考えだ。 「……きたです!」 パタモンが空の先を見て、ロイヤルナイツが向かってくることを伝える。 わたしたちは、それを合図にして、雪球をセットして、発射の準備をした。 友樹くんがスコープを覗き込み、輝一くんが発射レバーを持つ。 わたしからは遠すぎてはっきりとは見えないけれど、カイゼルグレイモンがこっちに気付いてロードナイトモンから飛び退いた。 「今だ!」 「発射!!」 雪は見事にロードナイトモンに的中する。そこからは流れ作業になって、作った雪球を次々とセットし、発射していった。 わたしも、どんどん雪球を作っていく。……冷たすぎて手の感覚がなかった。手袋、ほしいなあ。 「……あっ!」 「カイゼルグレイモン……」 雪球にやられるロードナイトモンに、カイゼルグレイモンが攻めようとしたとき、今度はデュナスモンがカイゼルグレイモンに襲いかかる。 デュナスモンはカイゼルグレイモンを巻き込んで、街のストーブタワーの方へ行ってしまった。 「パ、パタモン!」 「もちろんです!」 わたしは、とっさにパタモンを呼んだ。パタモンはこくんと頷いて、街の方を見に行った。 空では、ロードナイトモンとマグナガルルモンの戦いが始まっていた。 「ダメだ、動きが速すぎて狙いが定められない……」 「このままじゃ、マグナガルルモンが!」 「カイゼルグレイモンが、あぶないです!」 と、その時、飛んでいったパタモンが戻ってきた。はっとして、わたしたちは機械の向きを変える。 輝二くんには悪いけれど、今はデュナスモンのほうが先だ……! そして、スコープでデュナスモンの位置を確認し、デュナスモン目掛けて雪球を放つ。でも、それは届かなかった。 「あ、そっか、熱だ……!」 「ストーブタワーの熱で溶けちゃう……!」 ……となると、わたしたちは途端に為す術がなくなってしまった。 大きな石をここにセットして放てばいい、と思ったけれど、辺りにはそんな石なかった。 皆は、カイゼルグレイモンを応援し始める。――どっ、どうしよう、このまま応援してるだけなんて! 「た、拓也くん……!」 わたしがぎゅっと瞳をつむったときだった。 カイゼルグレイモンは炎を巻き上げ、デュナスモンに飛びつく。もろに炎を喰らったデュナスモンは、地面に倒れ込んだ。 ストーブタワーの熱が、炎の力を使うカイゼルグレイモンに力を貸してくれた、とか、そういうことかな。 「うッ……!」 カイゼルグレイモンに安心したのもつかの間、その後ろではマグナガルルモンがロードナイトモンに押されていた。輝二くん……! わたしたちは、急いでロードナイトモンに機械の砲口を構える。 「今だ!」 「発射!」 「アージェント……グアアッ!」 これでマグナガルルモンには当たらなくなった……、と思っていた。でも、その技の矛先はわたしたちのほうに向かってきていて。 じわじわと、衝撃波が近付く。 「想、輝一ィィ!」 わたしの目の前に、マグナガルルモンが飛んできて、身体が吹っ飛んで。わたしの頭には、マグナガルルモンの声だけが、響いていた――。 NOVEL TOP |