勇気は氷より強く
[4/4]



「友樹はんがスピリットを受け入れられたのは――あの勇気があったかもしれん」

 戦っていると、ボコモンがそう語る声が聞こえた。友樹くんは、とっても勇気のある子だ。だから、強いんだ。
 サジタリモンさんが動揺していると、隙を見つけたエンジェモンさんがサジタリモンさんに正拳突きをする。――すると、サジタリモンさんはお空の彼方へ飛んでいった。

 残ったのは、倒れたケンタルモン。


「どうする、これ以上やり続けても結果は見えているが」
「まだやるつもりか」
「に、逃げろー!」

 ケンタルモンの大群は大急ぎで去っていった。――よかった。
 ケンタルモンたちの姿が見えなくなってから、わたしたちは進化を解いた。



「……悪かったな、お前を弱いだなんて言って」

 勝春くんは、そうして友樹くんに手を差し出す。友樹くんは一瞬きょとんとしていた。
 鉄平くんも照れながらサンキューな、と言った。

「……う、うん!」

 そう言って勝春くんと握手を交わす友樹くんの背中は、とってもたくましく見えた。
 感動して泣きそうになったけど、そんな場合じゃない。わたしは勝春くんたちに近づいた。


「あ、あの。ごめんなさい、わたしも、あなたたちの状況とか何も考えずにあんなこと言って……」
「いや……、オレの方こそごめん。というか、それを言うならオレたちだって、あんたたちが戦えるとか何も知らなかったし、お互い様ってことで。な?」

 勝春くんはそう言ってサムズアップをした。本当に、全然気にしてないんだろうか、安心した。

「……オレも、ごめん」

 鉄平くんも、頭を下げる。
 分かり合えたことが嬉しくて、わたしはえへへ、と笑った。


「これから、どうする?」
「オレたちは、友樹たちとは違う。それに、さっきあいつらが言ってたことも本当みたいだしな」
「……それじゃあ」

 帰る、ことにしたんだろう。
 勝春くんは頷いた。他の皆も、晴れやかな表情をしていた。悔いはないみたいだった。
 よかった、と思っていると、突然風が吹き荒れる。あれは、と誰かが叫んだ。上空には、――デュナスモンとロードナイトモンがいた。


「無様に敗北した者達が、まだ生きていたとはな」
「……何だお前たちは!」
「っ、エンジェモンさん待って!」


 エンジェモンさん一人が立ち向かったところで、敵う相手じゃない。わたしは呼び止めたけれど、彼はデュナスモンに向かっていく。


「……邪魔だ!」
「ガアアッ!」
「エンジェモン……!」


 デュナスモンが一突きすると、あっという間にエンジェモンさんの身体にはデジコードが浮かび上がり――そしてデュナスモンは何の迷いもなく、スキャンした。
 どうして、あんなにひどいことが出来るんだ。どうして、わたしはスピリットを持っているくせに何も出来ないんだ。


「フハハハッ!」
「わあっ」


 悔しさに苛まれているとき、ロードナイトモンがネットを放った。
 そして、勝春くんたちの近くにいたわたしは、勝春くんたちと共にネットの中に捕らえられてしまう。


「想っ!」

 皆が、輝二くんがわたしを呼ぶ。――また、輝二くんに迷惑かけちゃう。強くならなきゃいけないのに。

「美しきこの私に囚えられることを、名誉に思うがいい」
「や、やだ……っ」

 行動は全く美しくない。わたしは進化しようと思った。がちがち手が震えるし、ネットの中が狭くてデジヴァイスを取り出すことすらままならない。


「……ッ!」
「友樹くん……!」


 友樹くんがネットに飛びついた。ロードナイトモンは、そのまま飛んでいく。そしてわたしたちは、連れ去られていった。
 ――また一人、デジモンさんが亡くなった。わたしたちは、わたしは何も出来なかった。



131006
妙に長くなりました。/(^o^)\

prevnext


NOVEL TOP