未知に満ちて月
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これがデジタルワールド!? 月からの脱出
 デジコードが奪われ、随分とこの世界は寂しくなってしまった。デュークモンは、かつて栄えていたデジタルワールドの姿を思い浮かべる。
 ケルビモンが倒れ、デュナスモンとロードナイトモンの二人が動き出した。
 デュークモンは、彼らと同じロイヤルナイツと呼ばれる軍団に在った。だが、彼らの正義と自分の正義の矛先は、全く以て異なるものだった。
 このままいけば、彼らはデータを奪い尽くしそしてルーチェモンが復活するだろう。だが、デュークモンは彼らを止めようとはしなかった。


*
 気が付くと、わたしはベッドに横たわっていた。身を起き上がらせると、そこには同じようにベッドがいくつも並んでいて、皆が寝ている。輝一くんだけは、その場にいなかった。


「皆……、お、起きて……!」


 わたしは、皆に呼びかけた。どうして、こうなってしまったんだろう。
 自分なりに戦ってきたつもりだったのに、世界は失われつつある。――もっと、しっかりしなくちゃいけない。
 部屋の自動ドアが開いた。そこから、輝一くんと星型のデジモンさんが現れた。


「想ちゃん! 気付いたのか」
「おお、よかった! 私は、スターモンだ!! 倒れていた君たちをここまで連れてきたんだ!」
「輝一くん、スターモン、さん……?」


 いまいち状況が掴めないのだけれど、どうやらこのスターモンさんがわたしたちを助けてくれたみたいだった。
 わたしは、頭のてっぺんから足の爪先まで、輝一くんを見る。輝一くんはどうやら傷がないようだけど、わたしが思い出すのは輝一くんが『想ちゃんは生きているんだね』なんて、わざわざ言ったことだった。どうして、そんな不吉なことを言ったんだろう。


「とにかく、想ちゃんが無事で良かったよ」
「う、うん、輝一くんも……、よかった、本当に」


 輝一くんは笑ったけれど、わたしはその笑顔に切なさを感じた。その理由は、よく分からなかったんけれど。



「月、だって!?」

 それから何分もかからないうちに皆が目を覚まして、そしてわたしはここが月であることを知る。
 確かに窓の外には宇宙があって、ずっと先には虫食いだらけのデジタルワールドが浮かんでいる。


「信じられない!」
「それは、俺だって同じだ」

「完敗だな、ロイヤルナイツ強すぎる……」
「うん……」

 純平さんがしょんぼりと言う。わたしも悲しかった。

「何じゃいなんじゃい! しょげとる暇はないぞい! デジタルワールドに戻って、ルーチェモンの復活を食い止めるんじゃ!」

 ボコモンはそんなわたしたちにお説教をした。でも、自分のスピリットだって力の一部なのに負けてしまうのは、やっぱり苦しい。
 戻る方法にしても、そう簡単にいけるんだろうか。パタモンがスターモンさんに聞いた話によると、ここにはターミナルもレールもないそうで。


「じゃあ……帰れないの?」
「友樹くん……、」

 わたしは、友樹くんの手に触れた。

「いや、何としても帰るんだ!」
「……どうやって」

 輝二くんは壁にもたれて腕を組み、眉間にシワを寄せている。呆れた感じだった。
 わたしは、拓也くんを見る。しばらくの、沈黙があった。

「……皆で、考えよう! 何か、いい考えはないか?」
「うーん……」
「ぼくもかんがえるはら! う?ん……」
「ネ、ネーモン寝ないで!」
「ゴムパッチン!」


 ――月に来てまで寝られるネーモンのメンタルが羨ましいと思った。
 ネーモンがゴムパッチンされているとき、拓也くんが窓の外を見てああっ、と言う。見れば、デジタルワールドのエリアがまた一つ失われたようだった。


「あれも、ロイヤルナイツの仕業なんだよね……」
「想……、とにかく、出来ることをやろう! 何でもいいからやってみようぜ!」


 わたしたちは、拓也くんの言葉に頷く。
 そしてわたしは、デュークモンさんのことを思った。――今、あなたはどこで何をしているの。


「……デュークモンは、あいつらの仲間じゃないって言ってただろ」
「そーだよ。ロイヤルナイツ、っつっても色んなヤツがいるんだろ? きっと!」
「ありがとう。……だといいけどねえ、」


 考えていたことが分かったのか、輝二くんも純平さんもわたしを気遣ってくれた。
 それはとてもありがたかったけれど、わたしの心が晴れることはなかった。

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