愛と生命を育み
それから、わたしたちは虹色の結晶のある部屋にやって来た。そこに、オファニモン様が眠っているらしかった。[3/3] 「この、光の結界に――」 見上げるとあるのは、虹色混じりの光だった。そして、光は更に強く輝いて、オファニモン様の姿が見えた。光の結界に閉じ込められていても、とてもうつくしい姿をしていた。 「よくぞ……よくぞ、ここまで来て下さいました」 「っ、こんな結界、おれたちが……! トールハンマー!」 「ブレッザ・ペタロ!」 しかし、二体ははじき返されてしまった。結界が壊れないんじゃ、どうすることもできない! でもオファニモン様は、そのまま語り始めた。 「ありがとう。でも、私のことは良いのです。それより、あなた方に話さなければならないことがあります。あなた達が危険な目に遭うことを知りながら、何故この世界に来てもらったのかを」 それから、わたしたちはセラフィモン様の城で聞いたあの話を、再び聞いた。 闘士たちは力を合わせてルーチェモンを倒した。その後に彼らは姿を消し、そしてスピリットを残していった。それからの世界を、三大天使のオファニモン様、セラフィモン様、そしてケルビモンが政を担うようになった。 オファニモン様は愛と生命を。セラフィモン様は、法と秩序を。ケルビモンは、道と知識を司っていた。――やがて、ケルビモンとは考えが合わなくなった。 『綺麗事ばかり言わんでくれ! 愛だ、法だ、秩序だ!? 君たちはヒューマン族だ、ビースト族の我々の気持ちなど分かっていない!』 ケルビモンはそう言うようになり、だから二人はビースト族であるケルビモンに歩み寄ろうと相談をするようになった。でも、そのこともケルビモンは勘違いするようになった。ヒューマン族に都合の良い考えをしているだけだ、と。 そして、ある日。ついにケルビモンは堕天してセラフィモン様を襲い、オファニモン様をこのバラの明星に閉じ込めた。 「ケルビモンは、スピリットを五つと、色のビーストスピリットを持っていました。そして、その四つから邪悪な闘士を作り出しました。色のビーストスピリットには、人間の少女を捕らえスピリットを埋め込んだのです」 「……望」 シキモンのわたしが、望ちゃんの名を口にする。――わたしは望ちゃんのことを考えて、胸が苦しくなった。 ケルビモンは、それからデジタルワールド各地のデジモンに命じてデジコードを奪うように指示したのだという。そして、デジタルワールドはこのように欠けてしまった。 「このままではデジタルワールドは滅びてしまう……危険を感じた私は、ケルビモンの影響を受けていない、あらゆる世界に声をかけたのです」 そして、その呼び掛けに応答したのはピュアな心を持つ人間の子どもだけだった。オファニモン様はスピリットの居場所がどこにあるのかを知っていたから、メールで皆を導いたのだという。 ただ一つ、闇のスピリットだけは――ケルビモンが、この世界に迷い込んできてしまった輝一くんに植え付けた。 「あなた達は苦難を乗り越え、伝説の闘士のスピリットを集めました。スピリットが全て揃えば、ケルビモンを倒せるに違いありません。――本当に、よくここまで来てくれました」 オファニモン様は静かに笑った。今までの苦難すべてが受け入れられたような気がした。 『――愚かな考えだな、オファニモン』 「ケルビモン!!」 「何!?」 上の方でこわい声が聴こえた。この声には、聞き覚えがある――そう、ケルビモンだった。ケルビモンは、あえてわたしたちを今まで倒すことはなくスピリットをすべて集めさせ、この城に招き入れたらしかった。 『スピリットと今まで集めたデータが融合すれば、俺は一気にこの世界を支配できるのだよ――それが、俺の真の目的だ!!』 世界を支配するために、なんて。その為に、純粋にケルビモンを慕い、仕えていたラーナモンたちは犠牲になったのに。 「……ん?」 妙な違和感を覚えて、わたしは――シキモンは、顔をこする。シキモンの頬に付いた、色のスピリットのマークが光を放っていた。周りの皆も、身体についたスピリットのマークが同じように光っていた。 「スピリットが……」 「何が起こっているの?」 『――ついに、俺の望みが達成される時が来たのだ!!』 ケルビモンが叫ぶ。――最後の戦いがはじまろうとしていた。 130820 NOVEL TOP |