わたしは彼岸を見つめている
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「ベルグモン! もうやめて!」
「エアーショット! エアーショット!」

 ベルグモンに抵抗しているなか、下の方で輝二くんの声が聞こえた。


「奴は――、俺の双子の兄弟なんだ」

 双子。やっぱり――あの子は生き別れの双子なのか。
 自分の予感が当たったことが、少し寂しい。

「俺には……分かっていた、出逢った時から。――あいつは、ケルビモンに利用され、闇のスピリットを得た俺の兄、輝一なんだ!!」

 輝二くんは完全に戦意を喪失しまっていた。当たり前だった。今、ここでわたしがすべき最善のことは何なのだろう。分からない、けれどベルグモンをこのままにしてはいけない。それは確かな事実だった。

「天浮橋……、ウワァッ」
「想はん!」

 動きを抑えようと技を繰り出そうとしたところで、ベルグモンにはじき飛ばされてしまった。
 ばたり、と地面に落ちる。――そして、進化が解けた。ボコモンがわたしの傍に駆け寄る。

「べ、るぐもん、いや……輝一くん。輝二くんを倒そうなんて思わないで」
「黙れ!!」

 ベルグモンが吠えると、風圧でわたしの身体も激しく揺れた。
 まだ、輝二くんは戦うのをためらっている。

「無理だ……俺には出来ない。兄弟で戦うなんて!!」
「ッ、馬鹿野郎! 家族なんだろ、兄弟なんだろ!? 輝二が助けないで、誰がアイツを救えるんだ!」

 輝二くんは決心がつかないようだった。

「お前は一生そこで悩んでる気か? 勝手にしろ!!」

 そして拓也くんは穴から這い上がり、進化してアルダモンになった。
 パタモンも、ついにベルグモンにはじき飛ばされボコモンの元へ帰ってくる。

「輝二、戦ってアイツを救ってやるんだ」
「……」

 輝二くんは黙ったままだった。わたしは痛む身体を抑えつつ、輝二くんの横顔を見上げる。


「こう、じくん……。輝二くんさ、わたしがまだスピリット持ってなかった頃に『お前にしかできないことがあるんじゃないか』って言ってくれたよね」
「え? あ、ああ……」
「輝二くんには何気ない一言だったかもしれない。けれどわたしはそう言われてとても嬉しかった」
「想、でも――、俺には……っ、」
「輝二くんにはすてきな力があるんだよ。だからきっと、あの子だって救える!」


 わたしは輝二くんの手を取った。輝二くんは迷っている。わたしは輝二くんに助けられたことが何度もある。だから、それとおんなじように輝二くんは輝一くんを救える。

「アルダモン!!」
「あっ……!」

 アルダモンがベルグモンの攻撃にやられて、そして連れ去られようとしていた。
 輝二くんは、わたしの前に立つ。決意を固めた、そんな背中だった。そして輝二くんは、デジヴァイスを構えた。

「ダブルスピリット・エボリューション! ベオウルフモン!」
「こざかしい!!」


 ベルグモンは、進化したベオウルフモンに体当たりをした。それと同時に、辺りにはひどい煙幕が巻き上がる。けれど、なんとかアルダモンは救出することができた。


「マスターオブダークネス!」

 ベルグモンは、二体に向かって光線を放ったけれど、ベオウルフモンは剣で攻撃を跳ね返す。そこにアルダモンが火の球体のブラフマシルをぶつける。この二体の攻撃で、だいぶベルグモンはやられたようだった。

「今だ! ベオウルフモン!」
「……ツヴァイハンダー!!」


 光の力が、闇のベルグモンに襲いかかる。これで完全にベルグモンは戦えなくなった。ベルグモンの中に、ダスクモン、そして――輝一くんが現れる。輝一くんの苦しそうな声と、ベルグモンの呻きが響きあう。それとほぼ同時に、コードが浮かび上がった。


「闇に蠢く魂よ、聖なる光で浄化する! デジコード・スキャン!」


 スキャンすると同時に輝二くんの進化は解ける。わたしたちは輝二くんに駆け寄った。苦しそうに、胸を抑えていた。
 輝二くんは、よろめきながら歩いて、ベルグモンがいたはずの穴を覗きこむ。そこには、スキャンされた輝一くんが倒れていた。
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