わたしは彼岸を見つめている
「ベルグモン! もうやめて!」[2/2] 「エアーショット! エアーショット!」 ベルグモンに抵抗しているなか、下の方で輝二くんの声が聞こえた。 「奴は――、俺の双子の兄弟なんだ」 双子。やっぱり――あの子は生き別れの双子なのか。 自分の予感が当たったことが、少し寂しい。 「俺には……分かっていた、出逢った時から。――あいつは、ケルビモンに利用され、闇のスピリットを得た俺の兄、輝一なんだ!!」 輝二くんは完全に戦意を喪失しまっていた。当たり前だった。今、ここでわたしがすべき最善のことは何なのだろう。分からない、けれどベルグモンをこのままにしてはいけない。それは確かな事実だった。 「天浮橋……、ウワァッ」 「想はん!」 動きを抑えようと技を繰り出そうとしたところで、ベルグモンにはじき飛ばされてしまった。 ばたり、と地面に落ちる。――そして、進化が解けた。ボコモンがわたしの傍に駆け寄る。 「べ、るぐもん、いや……輝一くん。輝二くんを倒そうなんて思わないで」 「黙れ!!」 ベルグモンが吠えると、風圧でわたしの身体も激しく揺れた。 まだ、輝二くんは戦うのをためらっている。 「無理だ……俺には出来ない。兄弟で戦うなんて!!」 「ッ、馬鹿野郎! 家族なんだろ、兄弟なんだろ!? 輝二が助けないで、誰がアイツを救えるんだ!」 輝二くんは決心がつかないようだった。 「お前は一生そこで悩んでる気か? 勝手にしろ!!」 そして拓也くんは穴から這い上がり、進化してアルダモンになった。 パタモンも、ついにベルグモンにはじき飛ばされボコモンの元へ帰ってくる。 「輝二、戦ってアイツを救ってやるんだ」 「……」 輝二くんは黙ったままだった。わたしは痛む身体を抑えつつ、輝二くんの横顔を見上げる。 「こう、じくん……。輝二くんさ、わたしがまだスピリット持ってなかった頃に『お前にしかできないことがあるんじゃないか』って言ってくれたよね」 「え? あ、ああ……」 「輝二くんには何気ない一言だったかもしれない。けれどわたしはそう言われてとても嬉しかった」 「想、でも――、俺には……っ、」 「輝二くんにはすてきな力があるんだよ。だからきっと、あの子だって救える!」 わたしは輝二くんの手を取った。輝二くんは迷っている。わたしは輝二くんに助けられたことが何度もある。だから、それとおんなじように輝二くんは輝一くんを救える。 「アルダモン!!」 「あっ……!」 アルダモンがベルグモンの攻撃にやられて、そして連れ去られようとしていた。 輝二くんは、わたしの前に立つ。決意を固めた、そんな背中だった。そして輝二くんは、デジヴァイスを構えた。 「ダブルスピリット・エボリューション! ベオウルフモン!」 「こざかしい!!」 ベルグモンは、進化したベオウルフモンに体当たりをした。それと同時に、辺りにはひどい煙幕が巻き上がる。けれど、なんとかアルダモンは救出することができた。 「マスターオブダークネス!」 ベルグモンは、二体に向かって光線を放ったけれど、ベオウルフモンは剣で攻撃を跳ね返す。そこにアルダモンが火の球体のブラフマシルをぶつける。この二体の攻撃で、だいぶベルグモンはやられたようだった。 「今だ! ベオウルフモン!」 「……ツヴァイハンダー!!」 光の力が、闇のベルグモンに襲いかかる。これで完全にベルグモンは戦えなくなった。ベルグモンの中に、ダスクモン、そして――輝一くんが現れる。輝一くんの苦しそうな声と、ベルグモンの呻きが響きあう。それとほぼ同時に、コードが浮かび上がった。 「闇に蠢く魂よ、聖なる光で浄化する! デジコード・スキャン!」 スキャンすると同時に輝二くんの進化は解ける。わたしたちは輝二くんに駆け寄った。苦しそうに、胸を抑えていた。 輝二くんは、よろめきながら歩いて、ベルグモンがいたはずの穴を覗きこむ。そこには、スキャンされた輝一くんが倒れていた。 NOVEL TOP ×
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