輝くことができたなら
「やったあ、出た!」[2/3] 「でたでた」 「出たぞい!」 「はやく輝二くんたちのとこに行かなきゃ!」 「……想、首、閉まる……はやく先行って!!」 トンネルを無事に掘り終えて。 拓也くん、ボコモンネーモン、パタモンのあとに続いてわたしも地上に顔を出したけれど、さすがに狭くて息が詰まりそうだった。 顔を出したところで、すぐに獣のような鳴き声が聞こえた。風が音を伝えて、辺りが響く。わたしたちはそれに驚いて、トンネルから飛ぶように脱出した。 「な、何……?」 「何かの鳴き声?」 「まさか。あんなでかい声で鳴くなんて!」 「……闇の大陸に、それほどのデジモンがいるの?」 大きくて、不気味な鳴き声のデジモン。こわくなって、わたしはきゅっとくちびるを噛み締める。 わたしは目の前で立ち上がった拓也くんの背を見る。覚悟を決めて、光と闇のふたりのもとへ行かなくちゃいけないんだ。 「急ごう、輝二のもとへ」 「うん」 たぶんわたしは輝二くんが好きなんだ。だからこそ、輝二くんを助けたくて。 わたしは、ぐっと足に力を込めて走り続ける。 少し走っていると、泉ちゃんが隣にきた。 「ねえ、想。あなたがいなくなった間――、どうしてたの」 「それ、ボクも気になってた。イナバモン? だっけ……」 「え……」 そうだった。 そういえば、みんなには何も話していなかった。わたしはセフィロトモンの体内から直接出ることはなく、現実世界で行ってこの世界を選択して戻ってきた。しかも、色の新しい闘士になった状態で。 だから泉ちゃんたちみんなが不思議に思うのは無理のないことだった。 「ハクジャモンと、ヤタガラモンってデジモン――、それはどっちも『花子』ちゃんだった。もちろんそれは本当の名前じゃなくって、本当は望ちゃんっていうんだ。……わたしの、大好きだったお友達」 わたしは地面に目を伏せながら、少しずつ望ちゃんのことを話した。みんなはとても驚いた表情で、わたしの話を聞いていた。 すべてを話し終えたとき、わたしの視界は涙でにじんでいた。 「いろのおねえちゃん、泣いてるまき?」 「想はん、涙拭くはら!」 「想大変だったねえ」 ボコモンは腹巻からハンカチを差し出す。いつから持っていたんだろう。わたしはそれを受け取って、涙を拭いた。 望ちゃんだって苦しんでいたから、泣いてちゃいけないのに。 「ケルビモンに利用されてたなんて……望ちゃんも、辛かっただろうな」 「うん。もっとはやく気付けていればよかったって、思う。そしたらこんなことには……」 「でも、今はデータをロードできてただろ?」 「……なあ。元の世界に戻ったら、望ちゃんも一緒に、みんなで遊びに行かないか?」 「望ちゃんも一緒に……?」 「おう! 世界を救った記念、みたいな?」 拓也くんはにかっと笑った。わたしはそんな拓也くんを見て、また夕くんを思い出す。けれど、夕くんとはまた違った、あたたかさだった。 もし、もっと前からわたしと望ちゃんが拓也くんに出逢ってたら。そうしたら、こんな回り道をすることはなかったかもしれない。 NOVEL TOP ×
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