輝くことができたなら
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飛翔! 闇の闘士ベルグモン
「あいつは単独行動が多いんだ!」
「……でも。輝二くんは変わったよ」


 輝二くんを探しながら歩いていると、純平さんのそう呟く声が耳に入った。わたしは静かに反論する。確かに最初の頃は、誰ひとり寄せ付けようとしなかった。
 わたしがこの世界ではじめて出逢った人は、輝二くん。けれど冷たいながらもわたしを助けてくれた。
 護ってくれて、優しい言葉をかけてくれて、少しずつだけど皆と一緒にいてくれるようになって、わたしが泣いていたときに傍にいてくれて。輝二くんといると、とても心地が良かった。

 フェアリモンとブリッツモンが空を跳んでも、輝二くんは見つからなかった。
 暗くてさびしい空を見上げる。輝二くんも、今頃この同じ空の下で――彼と闘っている。


「光のおにいちゃん、あっちにいるです?」
「光のお兄ちゃんって?」
「輝二のことね」
「……あ、みて、わたしのデジヴァイスも」


 パタモンが飛んでいるほうをわたしたちは見ていた。すると今度は、わたしのデジヴァイスで、色のスピリットのマークが浮かびはじめた。光と闇に呼ばれている、ということなんだろうか。
 色は光であって闇であるから、特殊なスピリットということらしいけれど、スピリットを持っていても、いまいち実感できなかった。


「あっちのほうが、ぴかぴかしてるはら?」
「わ、待って、パタモン!」
「想まで! ……ピカピカって、何か見える?」
「……パタモンは三大天使の生まれ変わりじゃはら、不思議な力があるのかもしれん」


 デジヴァイスは、パタモンが進む先と同じ方向へと光の筋を伸ばしている。きっと、この先に彼はいる。
 拓也くんたちは、後ろで相談をしていたみたいだったけれど、少し遅れてわたしたちのあとを追いかけてきた。
 わたしは今までずっと、輝二くんに支えられてきた。だから、今度はわたしが輝二くんをいっぱい支えたい。
 ねえ輝二くん、わたしは今からあなたの元へ向かうよ。だからどうか、無事でいて、闇のあの子を救い出して。


*

 ――と思って歩き始めたはいいものの、パタモンは小さな耳で飛ぼうとするものだから、進むのがとてもおそくって。
 泉ちゃんが「あたしが抱っこして行こうか」と提案しても、パタモンはそれを嫌がった。
 わたしのデジヴァイスは相変わらず真っ直ぐな光を示している。けれど、パタモンを追いていくわけにもいかなかった。


「じぶんでとんでいきま?す……ふわああっ」
「なんじゃ!?」
「きますです……」
「来るって?」

 よろこんで飛んでいたのに、パタモンは急におびえたようにボコモンのもとへ飛んでいき、そしてボコモンの腹巻のなかへ入り込んでしまった。
 パタモンの指差すほうを、わたしたちは見やる。すると、先の方で黒い稲妻がとどろき、そして柱がわたしたちに襲いかかった。――その瞬間、輝二くんなのか、輝二くんによく似たあの人なのか――その人の姿が頭をよぎった。



「くっ、……大丈夫か?」
「……うう、痛い」

 煙幕が少しずつ晴れていく。わたしは倒れた身体を起こそうとしたけれど、全身をとっても痛めてしまっていた。
 どうやらわたしたちは、あの黒い柱に閉じこめられてしまったみたいだった。

「ということは、その何者かが、オレたちが先に進むのを快く思っていないんだな……なら」

 わたしたちは互いに顔を見合わせて、頷く。やることはもちろんただ一つ、進化してこの柱を打ち壊すこと。
 ――けれど、必殺技をしても、柱は壊れることはなかった。足元では、パタモンが懸命に地面を掘っている。


「トンネルをほってるです」
「パタモンは聡明でござるな!」


 確かに、上がだめならば下からいけばすすめるはず。三大天使の生まれ変わり、というだけあって頭のいいデジモンだった。
 それからわたしたちは、進化したまま土を掘り進めていった。わたしは一刻もはやく、光と闇のふたりのもとへ行かなくてはいけない。ただ、わたしのデジヴァイスだけが光を真っ直ぐに伸ばしていっていた。

 ダスクモンのなかにいる彼。輝二くんによく似た彼。――彼が誰なのかは分からないけれど、あの子は確かに渋谷駅の階段で転落して、ついでに下にいたわたしも巻き込まれて倒れてしまった。
 あの子はどうして輝二くんにそっくりなんだろう。どうして闇の力を受け継いでしまったのだろう。


「……ふたごの、きょうだい?」

 まさか。けれど輝二くんは前にはきょうだいはいないと言っていた。だからあり得ないはずなのに、彼は輝二くんにとても似ている。

「想、何か今言ったか?」
「え、う、ううん、何でもないよ!」

 拓也くんにそう言われてしまったから、わたしはぶんぶん首を振った。
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