わたしが力となれるなら
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「拓也くん……っ」


 わたしは自分の灰色のデジヴァイスをいじった。けれど、デジヴァイスには何の反応もなかった。


「さっき輝二はできたけど、」
「そんなに都合良くいくのかな……」
「……きっとできるよ!」


 根拠なんかないけれど、そう思った。皆は振り返って、わたしを見る。
 二人がどう思っても、少なくともわたしは信じたい。どんなにボロボロにやられようとも、拓也くんはきっと負けない。
 輝二くんも拓也くんも、わたしたちをずっと引っ張ってきてくれた。闇の大陸に入ったときだって、どんどん世界を切り開こうと歩いていっていた。拓也くんは闇に呑まれてしまっても、またこの世界に来て戦った。


「拓也!」
「拓也くん!」


 堕天したセラフィモンの攻撃にやられて、ついにヴリトラモンは拓也くんに戻ってしまう。拓也くんのトレードマークのゴーグルが、割れる映像が見える。


「やっぱり、そんなに都合良く進化できるはずないんだ!」
「……そんなことないっ!」

 純平さんを一喝したのは、友樹くんだった。

「拓也お兄ちゃんは、絶対に諦めたりしないよ……! どんなときも、絶対諦めたりしないっ!」
「……そうだね、拓也くんは、強い人だもの。きっと拓也くんは負けないっ!」


 友樹くんも泣いていた。わたしも泣いていた。わたしは、信じているからこそ、傷ついた拓也くんの姿が苦しかった。――拓也くんの元へ行って、拓也くんを助けたい!


「そ、そうよ! 二人の言うとおりよ!」
「そうじゃ、あいつはそう簡単にくたばらん!」
「ねえ、皆……っ」
「ああ、想! 皆で、拓也を助けるんだ!」


 純平さんとわたしの考えていることは、同じだった。また、弾き返されるかもしれない。それでも、何もしないで最初から諦めているのは嫌だ。
 ネーモンはわたしたちを止めようとしていた。けれど、わたしたちの決意は固く。


「大丈夫だよ、ネーモン」
「結界なんて、突き破ってみせる!」


「スピリット・エボリューション!」


 わたしたちは全員人型のデジモンに進化した。チャックモン、シキモンは飛ぶことができないから、フェアリモン、ブリッツモンに抱えてもらった。
 そうして、シキモンたちは拓也くんのいる緑色の球体の前まで飛ぶ。


「準備はいいか?」
「無論! 可視光拳っ!」
「トール・ハンマー!」
「いくわよ!」
「スノーボンバー!」
「ブレッザ・ペタロ!」


 拓也くん――。シキモンもわたしも心はひとつとなって、拓也くんを思った。どうか、この力が彼に届きますように――。
 そして、たまごが、再び世のスピリットが力を授けてくれますように――。


「拓也っ!!」


 わたしは叫ぶ。拓也くんの名前を。
 そのときだった。再び、たまごが光り出して、そしてわたしのデジヴァイスも閃光した。そこに浮かぶのは、世の文字だった。――ありがとう、世のスピリット。


『オレは、もう、二度と負けるわけには行かないんだー!!』


 あのとき、輝二くんの声が聞こえたように、拓也くんの声が聞こえる。
 球体のなかで、拓也くんが二つのスピリットに囲まれて、そしてその二つと一緒になる姿が見えた。


「……アルダモン!」


 そして、彼は炎の闘士アルダモンへと進化した。
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