わたしが力となれるなら
[2/3] 「拓也くん……っ」 わたしは自分の灰色のデジヴァイスをいじった。けれど、デジヴァイスには何の反応もなかった。 「さっき輝二はできたけど、」 「そんなに都合良くいくのかな……」 「……きっとできるよ!」 根拠なんかないけれど、そう思った。皆は振り返って、わたしを見る。 二人がどう思っても、少なくともわたしは信じたい。どんなにボロボロにやられようとも、拓也くんはきっと負けない。 輝二くんも拓也くんも、わたしたちをずっと引っ張ってきてくれた。闇の大陸に入ったときだって、どんどん世界を切り開こうと歩いていっていた。拓也くんは闇に呑まれてしまっても、またこの世界に来て戦った。 「拓也!」 「拓也くん!」 堕天したセラフィモンの攻撃にやられて、ついにヴリトラモンは拓也くんに戻ってしまう。拓也くんのトレードマークのゴーグルが、割れる映像が見える。 「やっぱり、そんなに都合良く進化できるはずないんだ!」 「……そんなことないっ!」 純平さんを一喝したのは、友樹くんだった。 「拓也お兄ちゃんは、絶対に諦めたりしないよ……! どんなときも、絶対諦めたりしないっ!」 「……そうだね、拓也くんは、強い人だもの。きっと拓也くんは負けないっ!」 友樹くんも泣いていた。わたしも泣いていた。わたしは、信じているからこそ、傷ついた拓也くんの姿が苦しかった。――拓也くんの元へ行って、拓也くんを助けたい! 「そ、そうよ! 二人の言うとおりよ!」 「そうじゃ、あいつはそう簡単にくたばらん!」 「ねえ、皆……っ」 「ああ、想! 皆で、拓也を助けるんだ!」 純平さんとわたしの考えていることは、同じだった。また、弾き返されるかもしれない。それでも、何もしないで最初から諦めているのは嫌だ。 ネーモンはわたしたちを止めようとしていた。けれど、わたしたちの決意は固く。 「大丈夫だよ、ネーモン」 「結界なんて、突き破ってみせる!」 「スピリット・エボリューション!」 わたしたちは全員人型のデジモンに進化した。チャックモン、シキモンは飛ぶことができないから、フェアリモン、ブリッツモンに抱えてもらった。 そうして、シキモンたちは拓也くんのいる緑色の球体の前まで飛ぶ。 「準備はいいか?」 「無論! 可視光拳っ!」 「トール・ハンマー!」 「いくわよ!」 「スノーボンバー!」 「ブレッザ・ペタロ!」 拓也くん――。シキモンもわたしも心はひとつとなって、拓也くんを思った。どうか、この力が彼に届きますように――。 そして、たまごが、再び世のスピリットが力を授けてくれますように――。 「拓也っ!!」 わたしは叫ぶ。拓也くんの名前を。 そのときだった。再び、たまごが光り出して、そしてわたしのデジヴァイスも閃光した。そこに浮かぶのは、世の文字だった。――ありがとう、世のスピリット。 『オレは、もう、二度と負けるわけには行かないんだー!!』 あのとき、輝二くんの声が聞こえたように、拓也くんの声が聞こえる。 球体のなかで、拓也くんが二つのスピリットに囲まれて、そしてその二つと一緒になる姿が見えた。 「……アルダモン!」 そして、彼は炎の闘士アルダモンへと進化した。 NOVEL TOP ×
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