やさしく夜を包むように
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 みんなはおびえて、洞窟を暴れる。雷と雪があたりに轟いた。


「やめて!」
「落ち着け、落ち着くんだ!」
「ハハハハッ! 怖いだろう、恐ろしいだろう、闇の世界は!!」

 ブリッツモンがまた暴れだそうとして、アルダモンがそれを止める。

「……お前はいいよ! ダブルスピリット進化できたんだからな」
「ボクたちより強いもん」
「……そうだ、闇はお前たちの心のなかにもある。お前たちの心には、深い底なし沼のような闇がある」
「何であたしたちこんな目に合わなきゃなんないの」


 みんなは言い争いを始めてしまった。アルダモンが止めようとしても何も効かない。
 ――ここが暗いのなら、光で照らし出せばいいんじゃないか。わたしはそう思って、シキモンの腕を天に掲げた。


「可視光拳!」

 けれど、七色に輝くはずの拳は何の色ももたらさない。そもそも、技が出ない。

「無駄だ。お前の可視光拳は、光と闇が揃わないと意味がない」
「そんな……」
「シキモン! きっと何か他に方法があるはずだ」
「しょ、承知!」
「二人ともうるさいな! どっか行ってよ!」


 目の前で、風と雪がぶつかり合う。二人ともすっかり気が動転してしまっている。そして「怖い……」とつぶやく。
 アルダモンは、尻尾で地を叩いて、恐怖する三人に語った。


「怖がるな、光が見えた。オレたちは勝てる。相手は一体だ」
「その一体にやられっぱなしじゃんか!」
「目を閉じろ」


 アルダモンの策は分からなかったけれど、シキモンも言われたとおりに瞳を閉じた。

 ――オレたちは今デジモンなんだ。人間のときよりも感覚が鋭くなっている。感じるんだ――

 瞳を閉じて、真っ暗闇のなかでアルダモンが囁く。アルダモンの言うとおり、今のわたしは比沢想ではなく、色の闘士シキモンだ。

「感じる……色んな気配が」
「本当だ、水の音も、風の音も――、」
「みえる。彼奴の居所が感じられる」
「……ああ」
「――それに、オレたちは一人じゃない。五人も仲間がいるんだ」

 ずっと一人じゃない。みんなは、ここにいる。当たり前のことだけれど、わたしは泣きそうになっていた。


「ダブルスピリット進化はできなかったけど――皆の力を融合させるんだ」


 うん、と頷く。
 そこでセフィロトモンが再び光り「フィナーレだ!」と叫ぶ。シキモンたちは互いに顔を見合わせる。


「プレッザ・ペタロ!」
「スノーボンバー!」

 つよい雪風がセフィロトモンを打つ。セフィロトモンは慌てていたけれど、データにないなんて当たり前だった。


「ミョルニル・サンダー!」
「可視光拳!」


 雷鳴の上に乗って、虹の拳がきらめいた。
 それから次々にもみんなと一緒に協力して、新しい技をセフィロトモンにぶつけていく。

「オレたちはそれぞれの技を合わせて、新しい技を生み出したんだ!」
「ぐっ……」
「オレたちのデータはコピーできても、オレたちの成長はコピーできなかったようだな!」

 ――わたしたちは成長していった。仲間と、ともに。だから、一人のセフィロトモンには勝てるんだ。

「まさか……俺がお前たちごときに負けるわけがない!」

 セフィロトモンはめちゃくちゃに技を放つ。アルダモンはその技すべてをかわして「逃げるもんか――」と言った。


「逃げなければ、闇の中に光が見える! ――皆、セフィロトモンの動きを止めてくれ」


 アルダモンはセフィロトモンの弱点を発見したらしく、シキモンたちにそう呼びかける。だからその言葉にしたがって、みんなセフィロトモンに必殺技を放った。四つの技が重なって、セフィロトモンが打たれる。そして動きが鈍くなった所で、

「ブラフマストラ!」
「ウガアアア!」
「穢れた悪の魂を、このデジヴァイスが浄化する。デジコード・スキャン!」

 アルダモンが炎をぶつけ、そしてデータをロードした。みんなの力で、セフィロトモンを倒せた。
 望ちゃん。わたし――、強くなれたよ。


*

「みんながいたら、闇の中もこわくない」
「うん……よかった、仲間がいて」
「……あと、もう一人いる」

 わたしたちは互いに顔を見合わせて、頷いた。輝二くん。はやく、逢いたいよ。
 セフィロトモンによってはぐれてしまったとき、最後にわたしの手を取ろうとしてくれたのは輝二くんだった。
 それから逢えなかったあいだ、こんなことがあった、とか。そういうのも全て話したい。仲間、だけれど、輝二くんはわたしにとって大切な人なんだ。


130608
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