走り続けた世界
[4/4]



「ごめんな、皆……」
「何言ってるのよ。助けてくれて、ありがとう!」


 拓也くんは、再び勇気を持ってわたしたちの前に姿を現してくれた。拓也くんがいなかったら、作戦はここまで成功していなかった。
 拓也くんは、消えた間は人間でもない、デジモンでもない不完全な姿で現実世界に戻っていたらしい。けれど、結局この世界に来ることを選んだ。そうだった。みんなは、自分で選んでこの世界にやってきた。けれど、わたしだけは気付けばこの世界にいた。選択したわけじゃなかった。


「拓也、お前変わったな」
「うん。昔のオレじゃない。デジモンに進化するって、思った以上にすごいことなのかも」


 拓也くんは、デジヴァイスを握ってアグニモンに語りかけた。わたしも、それにならってデジヴァイスのシキモンのアイコンを見つめる。シキモン、いつも弱くてごめん。けれど、ちゃんとわたし、がんばるから。


「そういえば、想は何であいつらに捕まってなかったんだ?」
「あ、言ってなかったよね。……ヤタガラモンに出会ったの」
「何だって!?」


 拓也くんに尋ねられて、わたしは一人で行動していた間のことを話し始めた。
 皆は、びっくりしていた。当然の反応だった。皆が驚き発言している中、輝二くんはじっと考えていた。


「一つ、気になることがある。何故そいつは、想の名前を知っていたんだ。ヤタガラモンと話したのはシキモンになっているときだったんだろう」
「え、あ、確かに……!」


 輝二くんがそんなことを言ったから、わたしはとても驚いた。そんなこと、ちっとも気づかなかった。
 そうだ、ヤタガラモンは名前を教えてもいないのに、比沢想を助けてくれたのは――という発言を肯定した。
 ただヤタガラモンが状況からわたしがシキモンだと推測しただけにすぎないのかもしれないけれど、けれど違うような気がする。再び二体のデジモンの金色が、重なって揺れる。


「それに、やっぱりこの間の花子ちゃん、って子がヘンよね」
「花子ちゃん、がヤタガラモンで、想ちゃんを知ってるとか?」
「……そんな人、知らないよ、わたし」


 純平さんの推測が正しかったとして、何故“花子ちゃん”はわたしたちを助けたのか。わたしはそんな人、知らないのに――、何故、助けたの。
 ただひとつ確実に言えるのは、ヤタガラモンは、わたしを、比沢想を知っている。



121223

prevnext


NOVEL TOP