走り続けた世界
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 川を飛び超え、地を蹴り、走り続けた。しばらく走っていくうちに建物を見つけ、そこでブーメランは戻っていく。
 建物の屋上には、ヴォルフモンがいた。――メルキューレモンと、ラーナモンに追い詰められた状態で。
 屋上からすぐ視点を変えれば、そこには巨大な石に手足を拘束された泉ちゃん、純平さん、友樹くんの姿があった。泉ちゃんたちのデジヴァイスが結界によって閉じ込められている。
 ヴォルフモン一人で、敵を相手していたのか――! ヤタガラモンを追うんじゃなかった。わたしがずっと輝二くんや皆の傍にいればよかった。


「シキモン! 行くぞ!」
「が、合点!」


 って、暗いことなんて考えている場合じゃない!


「急げー!」
「それもそうだが……作戦も必要だ」


 アグニモンはちゃんと考えていた。アグニモンとシキモンが飛び出したところで、進化できない泉ちゃんたちは敵に捕らえられてしまう。――となると、三人を助けてデジヴァイスを取るのが先だった。


「そりゃ、そうじゃが……ウワッ!」
「ヴォルフモン!!」


 ヴォルフモンがカルマーラモンの触手に捕らえられ、床に叩きつけられた。ヴォルフモンが、落ちていく。――急いで、皆を助けに行かないと!
 けれど、アグニモンはある場所で立ち止まって動こうとしなかった。どうしたのとネーモンが声をかけても、アグニモンは動かない。


「味方の登場を待っているんだ」
「味方とは、一体……ッ!」


 そこまで言ってから、気づく。シキモンになると、五感が研ぎ澄まされること。これは、シキモンとわたしがひとつになっているからだ。今、わたしはデジモンになっている。普段意識していなかったことが分かる。


「……雷。風。……よし、きた」
「きたってなにが……」
「……! 吹雪が!」


 アグニモンは、自然の力の到来を待っていたんだ。事実、アグニモンが予測した通りに吹雪の中に雷風が轟く。


「雷よ、風よ、雪よ! オレたちの力となれッ!」
「拓也はん、自然を味方に……!?」
「オレ一人じゃない。神原拓也とアグニモン! デジモンの力、はっきりと感じる」


 そうか。これが、デジモンになるということだ。わたしもわたし一人だけじゃない、シキモンと共にある。


「オレは、デジモン! 炎の闘士、アグニモンだ!!」


 そう言う彼の背中が、とても強く見えた。
 アグニモンは仲間のもとへ、再び駆け出した。シキモンもその後ろを追いかけた。皆を助けなきゃ!
 ヴォルフモンがメルキューレモンによって倒れる姿が見える。輝二くん――ッ!


「フッ。残りの二人も現れたぞ」
「六人まとめて、あの世に行きなさいっ!」


 そんなことさせない!
 こちらに向かってきたラーナモンを、アグニモンが相手する。水と炎じゃ、水のほうが強そうだったけれど、アグニモンは負けなかった。今までの、アグニモンとは違う。
 ならばわたしも、皆を助ける! シキモンはグローブを付けているほうの手に力を込めて、拳を放った。拳は衝撃波となって、虹色が煌めく――!


「可視光拳ッ!」
「サラマンダーブレイクッ!」


 シキモンの拳が、デジヴァイスを封じる結界へ。アグニモンの炎が、円柱へ。衝撃波と崩れた円柱が結界を破壊したことにより、デジヴァイスが宙を舞った。


「ヴォルフモン、皆をッ!」
「分かった――ッ!」
「受け取れッ」


 ヴォルフモンが光の剣で皆の枷を外し、シキモンはデジヴァイスを投げた。
 皆はしっかりとデジヴァイスを受け取って、そして全員が人型へ進化を遂げて悪の闘士の前に姿を現す。


「六人揃えば、我らを倒せると思っているのか?」
「全員まとめて倒すだけよ!」


 ラーナモンはそう言うと、カルマーラモンになった。けれど、わたしはちっとも怖くなかった。


「ミョルニルサンダー!」
「トルナード・ガンバ!」


 エレキモンの集落を守ったときと同じように、ブリッツモンがカルマーラモンに電撃を喰らわせる。フェアリモンがカルマーラモンを蹴り上げる。


「スノーボンバー!」
「ツヴァイ・ズィーガー!」


 メルキューレモンの足がチャックモンの弾丸によって冷やされ、ヴォルフモンの剣がメルキューレモンに降りかかる。
 メルキューレモンは倒れて、カルマーラモンの元へとよろめく。そして、空ではひときわ強い雷が閃光した。シキモンは、その一瞬を見逃さなかった。


「色即是空ッ!」


 攻撃に打たれた二体を、黒のような、灰色のようなもやが包み込んだ。


「い、一体どうなってるの……!?」
「オレたちには強い味方がついているのさ!」
「そうか、こいつら自然現象を味方に――ッ」


 気付いたところで、もう遅い。アグニモンは、拳と拳を合わせた。


「バーニングサラマンダー!!」


 二体が燃えていく。風が炎を煽っていた。
 これで終いか――と思っていたけれど、二体は逃げてしまった。それでも、勝利には変わりがなかった。


「やった!」


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