てのひら
 最寄り駅が同じだということから、朝練がない日は一緒に登校をするようになった。
 付き合い始めてからもう少しで三ヶ月。朝練のないこの週二日の時間に、俺は癒やされている。

「おはよう。寒いねえ、俊介くん」
「おはよ、

 まだ眠そうな声でが現れる。電車もあと数分で着く頃だ。間に合いそうで良かった、とが微笑む。目が合ってへらへら笑うのはのクセだった。

「明日、雪降るって」
「だよねえ! お天気見てびっくりしちゃったよ」

 は時折息を吐いては、手を擦っていた。雪が降るほどではないが、今日もそれなりに風が冷たい。制服のスカートから伸びる細い足が寒そうに見える。

「あのね、去年まで使ってた手袋がさあ、穴空いちゃったの」

 こんな急に冷えるって思ってなかったから、新しいの買ってなくって。はそう呑気に話しながら、またへらへら笑った。

「あと! そういえばさ、この間変なキティちゃん見つけたの。俊介くん知ってるかなあ」

 喋り好きなは、急に話題が変わる。変なキティちゃん、と言いながらが見せたのは生八ツ橋に扮したご当地キティさんの画像だった。キティさんはプロ意識が高く仕事を選ばない故に時々こういう妙なグッズが登場する。が俺にこれを見せるために、わざわざ画像検索をして保存していたのだと思うと……アホらしくて可愛い。

「わざわざこれ、探してたのかよ」
「うん。面白いよね」

 携帯を持っていない方の手が、ぎゅっと結ばれる。見るからに寒そうだった。
 俺は、手を伸ばした。

「……少しは、マシになるだろ」
「あ、ありがとう」

 自分の制服のポケットに、の華奢な手を突っ込む。はきっとまたへらへら笑っているのかもしれない。顔を見るきにはなれなかった。
 ポケットの中で、が手を握り返し、指を絡ませる。

「……これなら毎日寒くってもいいや。手袋も買わなくていいねえ。えへへ」
「ダメだろ、今年のキティさんの手袋は可愛い」
「そこなの!?」

 に何故かつっこまれた。今度ギフトゲートに寄ったときにでもプレゼントしてやろう。そうしたら、または笑うだろうから。
 ――まあ、手袋は、俺といる時には、片方しか付けなくていいけど。


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