丈と無印主
 窓の外を見る。梅雨の時期らしく雨がざあざあ降る。
 丈くんが私の横に座った。白いソファが沈む。私は今までの、溜まったアルバムを今一度広げた。2003年4月、はこれは私と丈くんが高校に入学したときのだ。この写真は太一くんに撮ってもらったんだよね。

「長かったね」

 はじまりはあの日。私はそこでパートナーのコクワモンと出逢って、丈くんと触れ合えた。私の全てが変わったのは、1999年8月1日。あの冒険で学んだことが数え切れないほどある。

「うん」

 丈くんは照れくさそうに微笑んだ。私も笑って、ガラスのコップに注がれた麦茶を飲んだ。冷えているから、喉に麦茶がとおっていくのが感じられた。
 何気なく左手に眼を映す。薬指のダイヤモンドが煌いた。それは所謂婚約指輪だ。私は丈くんの誕生日の次の日の、6月25日に結婚する。城戸マナになる。

「あなた、って呼んだほうがいい?」
「それは、マナの好きにしていいけど」
「じゃ、ダーリン」
「……はぁ」

 丈くんはため息をついた。こんなところも昔から変わっていない。その間にも相変らず雨音は絶え間無く続く。

「ふふ。明日晴れるといいね」
「うん、天気予報では大丈夫だったよ」

 丈くんはベランダの前に立って空を見上げた。ざあざあ。ざあざあ。
 私はまたアルバムを捲った。ゴマモンとコクワモンが喧嘩して、丈くんが必死に仲介しているところ、一緒に大輔くんのバイト先のラーメン屋でお昼を食べたところ。皆みんな大切な想い出だ。

「城戸マナっていい名前」

 明日は、結婚式。


雨は昨日を刺す、
わたしは傘を差す、
きみは星を指す。


090624(昨日から明日へ)
title.金星様


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昔使ってたナノのIDあさってたら出てきた(^o^)
もったいないからセリフ一行だけ修正して持ってきました。笑
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