善悪/もしも双子の立場が 3
輝二くん仲間入り編
闇の闘士の正体は、輝一の生き別れの双子の弟、輝二くんだった。
闇の大陸へ降り立つ前に輝一が語ってくれた、実のお母さんの話。渋谷駅で、意識を失ったわたしの傍らで、同じようにして倒れていた輝二くん。もつれていた糸がほどけるかのように、あらゆる出来事がこの真相へと一つとなる。
車内は静まり返っていた。わたしはパタモンと一緒にそこへ向かう。足音、扉を開ける音が大きく響いた。
「……輝二、くん」
輝二くんはわたしを見ることも、何かを言うこともなかった。
わたしは少しだけ歩み寄り、数メートル先の輝二くんを見た。しばらく沈黙が続いてから、待っているわたしを嫌に思ったのか、輝二くんは口を開いた。
「……俺を、倒しに来たのか」
「そ、そんなわけないでしょ」
突然そんなことを言われるとは思っていなかったから、わたしはぎょっとした。わたしはこんなに弱いのに……って、彼に言いたいのはそんなことではなくて。
「あの、わたし、比沢、想って言います。色のスピリットの」
「ぼくは、パタモン、だはら!」
緊張をしながら名乗りあげるわたしの頭の上で、パタモンは飛び跳ねた。仲間が増えたことが嬉しいのだろうか、少し、機嫌が良いみたいだった。
「……あいつらの所へ戻れよ」
「そんなこと、言わないで」
「いい。お人好しのつもりなら、やめろ」
輝二くんはそう言うけれど、そう語る背中はとても悲愴を帯びていた。闇の闘士として対立し、闘った。数多くのデジモンをその手で、ただのデータへと換え、スキャンさせていった。けれど、彼がそうなるに至ったのには、原因があった。そして人間に戻った今この瞬間も、彼は苦しんでいる。
「わたしはお人好しなんかじゃないよ。ねえ、輝二くん」
「違う、俺は、取り返しのつかないことをしてしまった、だからもう」
よせ。関わるな。だからもう、に続く言葉を予想して、わたしは、手を伸ばした。
「ねえ。わたしを、見たことがあるでしょう」
依然として目を逸らし続けているままの輝二くんの、肩を掴む。自分でも強気な行動だと思った。けれど、わたしと輝二くんには確かに繋がりがある、はずなのだ。
輝二くんはわたしのその言葉にはっとして、やっぱり、と呟いた。
「……闇の闘士になっていたとき、時々夢を見た。その中に、何故かお前がいたんだ」
同じだ。渋谷駅でぶつかり合ってしまったことにより、わたしたちは、互いの姿を無意識に夢で見ていたのだ。
「わたしも、だよ。……輝二くんは、独りじゃないよ」
わたしがそう言うと、パタモンも同調するようにもう一人のお兄ちゃんも一緒です、と言った。
過ぎてしまったことは、やり直せない。けれど、これまでの行為の償いは、彼の今感じている心の痛みそのものだとわたしは思う。
「輝二くん。わたしと、一緒に行こう」
輝二くんは苦しそうな表情で、でもしっかりとわたしを見つめ返して頷いた。