tri.設定丈夢
夢主設定
高3。丈と付き合っている。パートナーはコクワモン。夢絵ページに詳細設定があります。



 夕暮れに染まる、廊下。校庭の方を見れば、クラブ活動が終わった生徒が帰宅を始めている。わたしも担任の先生に呼び止められていた。来月の一日から行われる、サマーキャンプのことだった。

「あと一人だけ、六年の班長が決まらなくて……加賀屋、頼まれてくれないか」

 最年長だから。一番年上だから、皆に優しくする。そうして求められた位置が、わたしは好きではなかった。
 わたしは少し考える素振りを見せてから「分かりました」と返事をした。
 わたしの逡巡に気付いたのかは定かではないが、担任はわたしの返事を聞くと一気に表情が明るくなった。なんて分かりやすい人なのだろうと思う。

「隣の班には城戸がいるから、わからないことがあれば城戸に聞くといい」

 案の定その名前が出てきたことに、わたしは微かに苛立ちを覚えた。
 いつだって城戸丈は正しくあろうとしていた。先生も同級生の保護者も、彼を高く評価していた。
 わたしにはその正しくあろうとする姿勢が分からなかった。家族でもない赤の他人の大人に評価されて、何になるのか。いちばん大切なのは、人にどう評価されるかより自分がどこに芯を通すのか、ではないの?

*

 携帯のバイブレーションに目を覚ました。人の多い車両のなかは、僅かに冷房が掛かっていた。わたしは太ももをさすり、少し前の記憶を呼び戻す。
 あれはコクワモンと出逢う前の、1999年の7月だ。世間ではノストラダムスがどうとか騒がれていた頃だ。あの頃のわたしは丈くんみたいに真面目な優等生タイプの子が好きではなかったし、休み時間に一緒に話をする友達はあれど同級生の誰に対しても心を開いていなかった。
 もしわたしがあの世界に行かなかったらと思うとぞっとする。寛容だなんて大それた物だけれど、わたしはあの夏の経験で、多角的に物事を見られるようになったし他を認め、赦すということを知った。コクワモンの友愛を受け、家庭に対して引け目を感じなくても良いのだと思った。
 メールは、彼からではなく、太一くんだった。それはサッカーの試合への招待だった。次の日曜日。残念だけれど、その日は伯母の墓参りに行く日だった。わたしと弟にとっては、欠かせない行事のひとつだった。
 太一くんに断りのメールを入れた後、昨日送ってから返信が帰ってこないままの受信ボックスを眺めていた。
 わたしはまた丈くんとは違う道にいるのだな、と思う。
 中学受験をする彼と、公立中学に進むわたし。都内有数の進学校を受験する彼と、それなりのレベルの大学附属校を受験するわたし。そして、今だ。
 国公立大学の医大を目指している彼と、附属の推薦を待っているわたしでは大きな差がある。当然今の彼は、これまで以上に受験勉強に励んでいる。

ちゃんって、城戸くんと付き合っているんでしょう? 塾が同じだから、時々見かけるの」

 それを言ったのは特進クラスの友達だった。彼女も国公立の大学を一般受験する。第三者越しに聞く丈くんを、わたしは少し羨ましく思う。
 受験に対する負担がわたしの方が明らかに軽い分、わたしは丈くんへの関わりを減らした。わたしは恋人ではあるけれどパートナーではないから、他人としての溝がどこかにある。そして、その溝にはわたしが手を伸ばしてはいけない。

 コクワモンが今のわたしを見たら、男のことばっか考えてるなあ、なんて笑われそうだな、と思った。





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二章でモブ彼女出てきたらどうしような丈彼女夢主です…( ; ; )
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