永遠/夢主とワイズモン
「エターナル・ニルヴァーナ!」
「……!?」

 一人でいるときに、初対面のデジモンに必殺技を掛けられるとはも予想していなかった。
 エターナル・ニルヴァーナは対象を時空石に封じ込めるための必殺技だ。間一髪で避けたものの、あのまままともに技を喰らっていたらは永遠にワイズモンの中で封じ込められることになっていた。

「……ワイズモン」
「おや、さすがだね嬢。僕を知っておいでかい。エターナル・ニルヴァーナで君を永遠にしておきたかったのだがね」

 知識の探求者、ワイズモン。もこの世界の神髄に触れたものとして、彼のことを知っていた。
 しかし、彼の性質がこれほどまでに奇抜だとはは思いもしなかった。

「デジエンテレケイアを宿しているとは、何とも興味深いよ」
「はあ……」
「ふむ、早速君の身体を調べてみようではないか。果たしてその額の刻印は何を意味しているのか、クルモンなるデジモンの実体についても解き明かしたいところだよ。デジエンテレケイアとは、デジタルワールドに存在した進化という現象の化身であったと記憶しているがね、しかしまあデジクロスより以前には進化という現象が起きていたとは俄かには信じられないよ。ジョグレス進化とデジクロスの違いについてもまだまだ研究の余地があるね。だから嬢はほら、服を脱ぎたまえ。その肌にも何か刻印はあるのかい。調べてみようではないか」
「……。さすがにタイガーちゃん以外に脱がされるのは困るのだけれど」

 ワイズモン長すぎるだろ! タイガーヴェスパモンなら良いのかよ! と色々なツッコミを入れたくなるが、ワイズモンは至って真面目であり、はいつも通り表情が読めない。
 ワイズモンは、未知なる人物への好奇心を旺盛にしてペンチやらハンマーやらを手にしている。

「僕は知りたがる心が強いのだよ。紋章を持つとするならば、さしずめ僕は知識の紋章だろうね。……さあ、大丈夫。痛くしないよ」
「あなただいぶ無理やりじゃない?」

 ワイズモンはの肩に手を置いてにやりと笑った。

!! 今すぐそいつから離れろ!」
「お!? が襲われてるぞ!!」

 ……と、そこへ周辺の警備をしていたタイガーヴェスパモンと、オメカモンが戻って来る。

「おや、これはこれは。ヴェスパモン軍隊の中でもトップに君臨すると言われている、タイガーヴェスパモンではないか!」
「解説はいい、その薄汚い手を退けろワイズモン!!」
「きゃータイガーちゃんがわたしのために怒ってるー」
「お! 楽しそうだな!!」

 タイガーヴェスパモンはいつになく真剣に怒っていた。
 は相変わらず仏頂面で適当なことを言い、オメカモンは意味が分かっているのかいないのかニヤニヤと笑っている。

「僕としては既に君達ヴェスパモンやローヤルベースの研究は終えているから、嬢を調べたいのだがね。しかも彼女は中々に美しい。是非とも標本にしてみたいと考えているよ」
はお前に解析される程単純ではない。このような状況下にあっても無表情でいるような娘だぞ!!」
「わーい無表情」
「お! 確かに表情筋が死んでるぞ、!」

 表情はないが、は喜んでいた。はたから見ていれば、威圧感のある少女という風にしか見えないのだが。

「無表情、それもまた良いではないか。聞くところによると、クルモンというデジモンは語尾にクルと付けたり、独特の高い声で話すらしいではないか。彼女はどうやらそうではないみたいだが、僕としては彼女とクルモンの相互性についても研究してみたいと思っているよ」
「やかましい、デジモンテイマーズでも観ていろ! 、早くこちらへ来るのだ!!」
「うん、タイガーちゃん」

 愛しのタイガーヴェスパモンに言われては、拒否する筈がない。はとことこと歩いてタイガーヴェスパモンの後ろに隠れる。

「おお、嬢。虎蜂君に恐れることはないよ。さあ僕とともにこの本の中へ」
「近寄るな。ローヤルマイスターで滅ぼしてやる!!」

 それから、二人は戦闘を始めた。
 タイガーヴェスパモンは、普段は寡黙なデジモンである。しかし今は怒りの感情が根底にあれどとても生命として勢いづいている。きっと、喧嘩するほど仲が良いってやつだわ。は、少し的外れなことを思いながら二体を見ていた。
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