善悪/もしも双子の立場が逆だったら
※善悪一話で、夢主がトレイルモンに乗ったあたりの話


 隣の車両には、わたしと同い年くらいの男の子がいた。彼はわたしが車両に入ってきたことに驚いたみたいだった。けれど、すぐに表情を変えて、笑いかけてくれた。

「こんにちは。もしかして、君もメールで来たの?」
「こんにち、は……? メール、ですか?」

 メール、って何のことだろう。疑問符を付けて聞き返していると、突然ポケットに入っていた携帯からまた音声が聞こえた。

 比沢想さん、森のターミナルを目指しなさい

「あ、あれ。携帯が変わってる……」

 見ると、渋谷駅までは確かに普通だった携帯が、今では灰色の機械に変わってしまっている。
 そして、そこからは謎の行き先を告げられている。

「俺も、そのメールを受信して森のターミナルに行くんだよ」
「そ、そうなんだ」

 相槌を打ちつつも、普通にそう言ってのける彼に驚いた。そんな怪しいメール、無視しちゃえばいいのに、と思った。
 それよりもわたしはお家に帰りたい。ここは一体どこなんだ。

「あの、ところで、ここはどこなんですか」
「……デジタルワールド。どうやら俺はメールでこの世界に来たみたいだけど……君もそうなんだろ」
「え……」

 さっきの携帯からの音声で確信したけれど、ここはスタートしますかの問いかけをした人が導いた世界。この人はたぶん、あのメールでYESを選択したんだ。
 ……それなのに、どうしてメール自体を削除したわたしはここにいるんだろう。

「わたし、お家に帰りたいんですけど、どうやったら帰れますか」
「悪いけどそれは分からない。俺は、森のターミナルに行くつもりだよ」
「……帰りたく、ないんですか」

 ふと、その疑問が沸き上がる。どうしてこんな訳の分からない状況で、素直に怪しいメールに従おうと思えるんだろうか。

「……帰りたくないように見える?」
「え、いや、別にそういう訳じゃないんですけど……」

 わたしは何も言えなくなった。ああ、聞いてはいけないことを、聞いてしまったんだ。わたしだって、誰にも知られたくないことがあるのに。
 そう後悔の念に駆られていると、彼は場を取り繕うように明るい声で話しかける。

「あぁ……ほら、森のターミナルなら、帰る方法も分かるかもしれないよ」
「そ、そうですよね」
「とにかく今はこれに乗って行くしかない。もう、トレイルモンは動いているから」
「あ、はい、ありがとうございます」

 彼は笑いながら話してくれた。わたしはぎこちなく返事をした。とても気を遣ってくれる人だった。申し訳なさでいっぱいになる。

「そういえば……名前言ってなかったよね。俺は、源輝一」
「比沢です、比沢想です……」

 わたしは自信なく言った。
 よろしく、と言って輝一くんは笑う。親しみやすいはずの人なのに、どうしてかわたしはその表情に違和感を覚えてしまった。

130922


デジフロで輝一くんと輝二くんの立場が逆だったら妄想。

源輝一
母親は亡くなったと聞かされ、幼少期に孤独を味わったことから自己評価が少し低い子どもとして育つ。
アニメ本編の輝二とは違い誰とも人間関係を円滑に進めようとしていたが態度は上辺だった。
誰に対しても優しいが、誰に対しても壁を作る。序盤はよそよそしい。深入りされたくないから優しさの壁を作る、みたいな。
両親との仲も表面的には良好だが継母との関わりに苦手意識がある。父親の顔を立てるために継母のことは母さん、と呼べてはいるが本当にそれだけ。親子らしい交流がない。継母もそのことに悩んでる。
それでも結婚記念日には花束を贈ろうとするが、その矢先でDWに。
どうでもいいが絶ちるの皆本さんと字が違うが同姓同名。

木村輝二
母親の苦労や病床の祖母の姿から、世界は理不尽であると考えている。学校にも友達はいるが、どこかいつも孤独感を抱えている。
恵まれた環境にあり、ぱっと見の性格も良さそうな輝一を快く思っていない。
輝一の存在を祖母から聞かされてから、母親に輝一のことを話す。話したときの母親は淡々と離婚し、それぞれが片方を育てることにした事実を語るのみであった。だが、その後に母親が「二人を育てたかった、輝二、ごめんね」と独り言を言っているのを聞いてしまう。
その後に、母親の携帯にオファニモンからのメールが来ていたことに気付き、渋谷駅に向かう電車で輝一を見かける。メールでここまで来たのか問おうと輝一を追うが、エレベーターに乗れず階段から落下。ついでに階段を降りていた想も巻き込まれる。
アニメ本編の輝一よりは片割れに対する憎しみは薄いがそれでもケルビモンに利用されてしまう。

夢主
善悪本編と同じように渋谷駅の階段から落ちDWに。
序盤では、優しいはずなのに距離のある輝一に不信感を募らせる。その後に和解するものの、自分も彼に無意識に距離をおいていたと気付く。
夢で輝二の幻影を見る。
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