始業式の朝。
私は仕方無しに鬼男チョイスのセーラー服を着た。
セーラー服が嫌いなわけじゃない、でも閻魔が喜ぶからやっぱり嫌いだ。鬼男の選んだセーラーは普通っぽかったけど、リボンが物凄く派手にキラキラしていたからそれだけ青のチェックに取り替えた。うん、充分可愛い。


「名前、時間ないぞ。朝飯は?」


「あ、食べる!鬼男、髪の毛やって!」


「はいはい…」


変態閻魔と鬼男は昔から私のお隣さん。
いつからかはわからないけれど、気付いたら隣に住んでいて、私が一人で住み始める時に二人も一緒に引っ越しをした。理由はよくわからないけれど、三人とも同じ学校に行くのだし、一人暮らしだし、いろいろ助かっている。
特に鬼男は一つしか違わないのに、凄く大人びていてお兄ちゃんみたいだ。
二人は親戚らしいけれど全然似てない。


「いつもと同じでいいか?」


「はーい!」


鬼男は手先が器用で良く髪を弄ってもらう。最初はポニーテールとかみつあみくらいしか出来なかったのに、いつの間にか巻いたり編み込みを入れてくるようになった時は驚いた。
最近は結ばないでふわふわにしてもらうのが好きだ。私は鬼男がいるせいで高二にもなってアイロンがまともに使えない。


鬼男に出されたトーストをそんなことを考えながら食べていると、終わった、と頭を叩かれた。


「ん、ありがと」


「にしても朝から汚したな…」


部屋の半分を占めるセーラー服と少しの閻魔の私服。クローゼットを引っ掻き回した結果だった。とりあえず畳んでやる時間も義理もないので端に積み上げておいた。あのままゴミにしてしまえばいいと思う。


「全部閻魔にやらせてよ」

「当たり前だ」

「あ、そろそろ時間!私今日クラス替えだから、先に行くね!」

「自分の家の鍵掛けていけよ、あと靴履き替えろ!」

「あはは、鬼男お母さんみたい!じゃねー!」


そう笑ったが、一瞬ちくりと心が傷んだ。あぁやっちゃったよ、と後悔して手に残っていたトーストを無理矢理詰め込んだ。

玄関前の姿見で自分を確認する。
セーラー服であることを除けばいつもの私だ。相変わらず鬼男は髪のセットが上手いなぁと感心した。


「名前」


「鬼男、どしたの?なんか忘れた?」

履いてきたサンダルを突っ掛けてドアを半分くらい開ける。鬼男は片手を上げて、ふっと笑った。


「行ってらっしゃい」


「…行ってきまぁす」





始業式の朝

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