「えんま、ねぇ、閻魔ったら!!」
「こーら苗字さん、閻魔先生、でしょ?」
廊下を走ってくる名前をそうたしなめはするものの、キラキラした笑顔を浮かべる彼女にこちらも微笑んでしまう。
こういうのを何というか知っている。惚れた弱みってやつだ。
ごくごく自然な動作で俺の腕を掴んで、聞いてよ、と言う。ただの先生と生徒の関係なんて、俺と名前の間で出来やしない。
だって俺は名前のためにここにいるんだから。
「で、なぁに?なんかあった?」
「あったあった。大有り。絶対最初に閻魔に教えてあげようって思って」
「なになに?」
「妹子くんがね、教えてくれたの。」
すーっと俺から笑みが消えていくのがわかる。
笑顔の名前。
なんて可愛いんだろう、この子が俺は大好きで、一番大切にしたくて、ずっと一緒にいたくて、約束したんだ。
名前を幸せにするまで、俺は
「私、幸せなの!」
名前が幸せになるまで、そばにいるって約束したんだ。
「…しあわせ…」
「うん、あのねこの間閻魔が…」
聞きたくない。
目の前は真っ暗だった。
笑顔、本当だ、幸せそうだね。
幸せ
それは俺への別れの言葉だよ、名前。