「うわーん、名前ー!」
「だいおう?」
私は仕事中に鬼男君に怒られた時や、あまりにも死者の数が多い時、ただやる気がでないときなんかも天国にいる名前のところにいく。
彼女ならではと雰囲気と、優しい笑顔、可愛らしい名前が、
私は大好きだった。
「またおにおにいじめられたの?」
「うん、そうなの。鬼男くんたら、ちょっとサボっただけで爪で刺してくるの!しかも目狙うんだよ、ほんと、鬼だよ!」
「だっておにおだもん。」
ふふー、と笑って、一生懸命背伸びをして私の頭を撫でてくれる。
小さな手がくれるその温もりが、愛しくて仕方ない。
「あ、だいおうにプレゼント!」
「え、なになに??」
「んとね、ちょっと待ってねー」
花畑に走っていく名前を見つめる。わかっている。
これは親が子を見つめるような気持ちなんかじゃない。そんな純粋なものじゃなくて、もっと自分勝手で、支配できない気持ち。辛いってわかっていても止まらない気持ち。
天国中に溢れる花も、名前が持てばなにより輝く光を放つ。優しくて、温かくて、やわらかい。
花が喜んだように見えるのは、多分私が喜んでいるからだ。
変わらない。
私は、
…俺はいまも。
「大王っ、朝ですよ!!!…ほら、はやく起きろ!!!」
「うわぁあ、ごめんなさい、鬼男くんっ!!!」
(まだ君の近くにいるよ)