「こんなところに…!!」
閻魔達の部屋でまぁまぁ美味しいクリームシチューをご馳走になったその日の夜、ようやく一日ぶりに私の制服が戻ってきた。
なんと発見場所は鬼男のクローゼットの中。考えればわかりそうなもんだけど、閻魔が少しでも頭脳犯だったことが意外だった。
「ぶー絶対名前はセーラーの方が似合うのに!」
「誰だって閻魔にはそう見えるんでしょ!」
「セーラーは正義だもん!!」
閻魔は口を尖らせながら、今朝私達がぐちゃぐちゃにしたセーラーコレクションにアイロンをかけている。
捨てたい、ものすごい捨てたい。でもセーラーを全て捨てたらこのクローゼットは限りなく空になる、なんとなくそれを見たくない。
閻魔がアイロンかけたセーラーをとりあえずクローゼットに戻してやる。
閻魔のでなければ可愛いのに。変態の所持品だとこんなに価値が下がるのは何でだろう。
「ねー、これどこで買ってんの?」
「ネットとか、制服専門店とか、名前じゃ入れないようなお店とかかなー?あ、興味あるなら教えてあげるよ?」
「ぁーもう黙れ!」
「名前が聞いたのに!」
ぷくぅと頬を膨らます閻魔を軽く無視して、とりあえずアイロンがかかっていないセーラーもクローゼットに戻す。閻魔に全部やらせていたら多分相当な時間がかかるだろうし、いつか捨てたいし。
「…あれ…?」
クローゼットの下に付いている引き出しを開けると、カラフルなリボンに埋もれて小さな箱が入っている。
黒いその箱は、プラスチックなんて安いものじゃなくて、よくドラマとかで見る、そう、まるで。
「これはだーめ」
「わ!!!」
後ろからぬっと閻魔の手が伸びてきて、私から小さな黒い箱を取り上げた。
振り返ると閻魔はニコとわざとらしく笑った。
「閻魔、それ指輪…?」
「ふふ、内緒!」
「もらったの?あげるの?ていうか、閻魔、彼女いたの…?」
「だから、内緒!ほら、名前これも掛けて!」
普段はあまり秘密なんて無いのに、頑なに言おうとしない閻魔。私は黙るしかなかった。
なんだろう、胸の奥の方が、痛い。