先輩は、綺麗な人だ。
高校で名前先輩は生徒会に入っていた。
名前先輩が三年生の時、初めて俺は雑用事務員みたいな形で生徒会に関係するようになった。
一年だった俺に先輩はいろんなことを教えてくれたし、時には勉強まで見てくれた。
本当に運がないやと思って入った生徒会だったけど、不運な数馬が当たらなかった理由がやっとわかった。ここで俺は先輩との関係を手に入れた。
「三之助、元気にしてた?」
「先輩こそ、今大学ってテストじゃないんですか?」
「テストテストで嫌になるから遊びにきたんじゃない、三之助もうちの大学入ったらまた楽しくなるなー」
その一言で俺の志望校が決まる。
俺に向けられるその笑みが大好きで、懐かしくて。
時々先輩はこうして遊びに来てくれる。他の先輩と一緒の時もあるし、一人で校内を彷徨いてるのを見つける時もある。
結構自由な人なのを、俺は知ってる。
「今度七松先輩達が遊びに来るって言ってたよ。今日誘ったんだけど、テストヤバイから無理って言われちゃった。」
「げ、七松先輩は来なくていい…。あの人来ると大変なんですよ。」
「あ、ひどーい」
くすくすと笑う先輩を見てると昔に戻ったみたいだ。他の先輩もだけど、本当に家族みたいに接してくれて嬉しい限り。
大学は制服じゃないから服は私服だけど、それ以外に変わったことなんてほとんどない。
「あ、そろそろ戻る!またね、三之助。皆にもよろしく」
「はい、また来てくださいよ」
「うん、三之助達いないとなんか落ち着かないしね!」
走って帰っていく先輩を見送って、また俺も教室に戻った。
(先輩、俺も)
正確には俺達も。
多分誰もが思っているんだ。
先輩達がいない校内が、ガランとしてしまっている気がする。
なぜだろう。別に学校に人はたくさんいるし、教室も余ってたりしないし。今まではあまりこんなこと思わなかったのに。
「あれ?先輩帰っちゃったの?会いたかったのに。」
藤内が俺を見付けるなりそう声をかけてくる。残念でした、と笑ってやると彼も笑った。
「…早く大学行きてー」
「ねー」
空間違和感
(彼らに感じるこの気持ち、なんだろう)