雷蔵に言われたことはどうしたって忘れることは出来ず、なんだかんだとずっと俺の心の奥に残され続けた。
でも人間の心というものは厄介で、いくら信頼できる者からの忠告でも、それに勝る強く消えない想いがあるのなら全てを忘れてそれに没頭出来てしまう。


ピピ、とまた携帯がなる。メールだ。
差出人は苗字名前。
なんてことない、今やっているらしいレポートについての解説や愚痴が簡潔に、しかし絵文字が散りばめられて可愛らしく述べられている。
今までだって一日に一回くらいは女からのメールを受け取って来たが、好意を持つ相手からの文面は何枚もフィルターがかかり、キラキラとして見えてしまうものだ。
昔付き合っていて、それなりに長めに続いた元彼女を思い出した。俺はあまりしないけど、動物や文字が動き回るデコメで何度も愛を綴ってきたことがあった。名前からのメールよりも、あれの方が可愛い部類だろうし、手も込んでるし、何より俺への想いがあったはずなのに。


「っと…送信。」


いつもなら蔑ろにしがちなメール返信だけれど、指が勝手に動いていく。メールチェックも普段の二倍どころじゃない、マナーモードも外していつ連絡が来てもわかるようにしてある。


あぁ、俺は彼女に惹かれているんだなぁ。
そんな第三者目線で冷静に考えられているように見えて、本当は何と言ってデートに誘おうかなんて考えてる。
デートしたいんだと直球に言うのがいいのか、何かの用事を理由に頼む方がいいか。それともまだデートには誘わず、飲み会でも開いて話した方がいいだろうか。
もし、来てくれなかったら俺はどうするんだろう。
諦めるか。彼女を諦められるのか、いや、簡単には無理だ。少し自尊心なんて捨てなきゃいけないかもしれない、それくらい、生まれて初めて彼女を、苗字名前を彼女にしたいと思ってる。



「…らしくねー…」




ピピ、と音がなる。
君と繋がった音が、今はただ心地よくて仕方がなかった。








恋慕


(君のこと考えてる時が一番幸せなんだって)


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