もう週末から週の頭にかけて四人が集まるのは当たり前で、生活の一部とでも言っていい感じだった。


誰かが買ってきた酒を飲み、やりたいやつが何かしら料理して(大抵は兵助か雷蔵)それを皆で取り合いながら食べる。足りなきゃピザなんかを取って、腹を満たす。

雷蔵や三郎の彼女の話や、ハチの失敗したナンパの話。その後に学校の授業、課題、テレビアイドル、ゲーム、くだらない話ばかりしていつの間にか眠っている。次の日の授業に遅刻することもしばしばあ
る。
そんなこの時間を四人は大切にしていたんだ。




「んで、兵助合コンどうだったの?」



「名前に会ったか!?どうだった?」


ピコピコとゲーム画面を見ながら、雷蔵とハチが兵助に叫んぶ。兵助はというとカップ麺をすすりながら、三郎と酒の缶を積み上げて遊んでいたところだった。
あー、と声を漏らして兵助は誤魔化そうとする。彼は元々こういう話が得意なわけじゃない。


「あったあった。」


「話したのか?」


「そりゃあハチにあんだけ言われてたし。」


「お、俺のお陰か?」


「ちょっとハチよそ見しないで!!」



雷蔵の声でハチがまた画面に視線を戻す。多少顔を赤くした三郎がそれに笑った。


「名前って兵助の顔知ってたのか?」


「なんとなく知ってたみたいだったな。まぁお前らといるとこ見てたんじゃないか?」


「ほー。兵助、イカ食う?」


「ん」


もちろんとばかりに二人して乾燥しきったイカを口に含んだ。兵助はまた酒の缶を開け、それでイカを流し込むようにした。彼も多少酔っているんだろう、顔にはほとんど出ないタイプなんだが。



「なんていうか、彼女さ」


「可愛かったろ?ギャルっぽくないし」


「顔は普通じゃねぇ?名前、性格が変わってんだよ。」


ギャーギャー言う三郎とハチに、雷蔵は画面に向かいながらも苦笑いした。画面にゲームオーバーの文字が映ると彼も兵助に向き直る。


「このまま付き合うってのは?」


「三郎、すぐそういう方向に行く。」


三郎はだれから見ても軽い男だった。まぁそれはどうでもいい女に対してだけで、本当の彼はかなり有能な人物であることはここにいる四人は知っていたが。
べ、と舌を出しておどける三郎に雷蔵はため息をついた。まぁまぁ、なんてハチがなだめるのもありきたりな光景だった。

しかし、雷蔵はふと立ちあがって兵助に言った。



「兵助、一緒にコンビニ行こう」


「なにいってんだ雷蔵、酒なら」


「いいから」


雷蔵は無理矢理に兵助を立たせるとそのまま引きずるように、部屋を後にした。
二人残された三郎とハチは言葉を失い顔を見合わせる。



「…なんかしたか、俺ら?」


「いや、わかんね。」



















「…名前のこと、兵助どう思ったの?」



二人きりで夜道を歩きながら、雷蔵は静かにそう言った。これには兵助も驚いたようで瞳を大きくしてそれを聞いた。




「…凄いタイプだと思った。」



やっぱり、と雷蔵は頷いて、兵助はそれに首を傾げるしかなかった。雷蔵がおかしい、兵助の頭にはそんなことが浮かんでいた。



「どうした?雷蔵、あ、…もしかして名前ちゃんが好き、とか?」


「ばかなこと言わないで。僕に彼女がいること兵助だってよく知ってるだろ」


「だよな、悪い」

「すごい言いにくいって言うか、あまり真に受けないでほしい話なんだけど」


「お、おう」


「兵助、僕は凄く嫌な感じがする」


ピタ、とコンビニの前で足を止めて雷蔵はそういった。目が離せない、笑える雰囲気じゃない。
なんだろう、すごく大切なことを言われたような、そんな気がした。


「…名前ちゃんが?」


雷蔵は首を振る。


「違う、兵助と、名前が一緒にいることが。」


「……俺と、名前ちゃん……?」







一筋の不安



(ごめん、別にだからってどうしろとか、ないんだけど)
(らい、ぞう…?)



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