皆をただ、見守っていくと決めたのです。





「世界会議を始めるぞ!」



そう掛け声をあげたのはアルフレッド。若さからかいつも元気で、活発で、ちょっと暴走するときもあるけれど何にでも比較的積極的な彼はその性格からも、国としての立場からも会議にはなくてはならない存在だ。


「じゃあ、まず俺の意見からだな!」


今日の議題について一人で話始めてしまったアルフレッドを無視して、隣のアーサーはなにやら熱心にいかがわしい雑誌を読んでいる。時々紅茶を口に運んでは、また雑誌に目を向ける。
アルフレッドの方には目もくれないのに、話が終わった途端ようやく雑誌から視線を外す。


「俺は反対だ」


「じゃあお兄さんはアルとアーサーに反対ね。」


「…てめぇ、喧嘩売ってんのか!」


「っていうか、アーサー、君絶対俺の話聞いてなかっただろう!?」


アーサーがフランシスの襟元を掴み、フランシスも負けじと対抗する。アルフレッドも加わりぎゃーぎゃーと騒がしくなる会議室。
いつもの風景すぎて、なんだか笑ってしまう。


「菊、そんな顔することねーある。いつものことある、ほっとけばよろし。」


「あ、いえ、ですが…」


「…あいつらは放っておいて、会議を進めるぞ。」


「全く、お馬鹿さんばかりで嫌になりますね。」


「…だから我輩は世界会議には来たくないのである。」


前で喧嘩を始めた三人を無視して、他の皆さんは会議を続行。
といっても騒がしい三ヵ国の意見は重要なのであまり勝手出来ないのも真実だ。困ったものだとため息が漏れる。



「名前ちゃーん」


端の方から私を呼ぶ声がする。声の主はアントーニョだ。
私は紅茶のポットを持って彼の元へ。今日もアントーニョは会議中に内職をしている。


「紅茶のおかわりですか?」


「いーや。このクッキー、名前ちゃんが焼いたん?」


「あ、わかりますか?」


「あったり前やん!めっちゃ美味しいわぁ、名前ちゃんさすがやなぁ」


お茶菓子にとテーブルの中心に置いた私作のクッキーを手にいくつも乗せて、アントーニョはニコリ笑う。


「こらぁそこ!なにお兄さんの名前ちゃんにちょっかい出してんの!」


「うっさいなぁ、名前ちゃんは俺と話してん、邪魔すんなや!」


「名前ー名前名前ー!」


また呼ばれて振り返るとフェリ君が手招き。


「…フェリシアーノさん、会議中ですから」


「えーだって見てよ!ほら!」


フェリ君が取り出した紙には何やら絵が書いてある。
さすがに咎めようとしたが、見て思わず口元が緩んでしまった。長いウェーブのかかった髪と、ひらひらとしたメイド服。随分デフォルメされて可愛らしくなっているけれどもしかして、これは。


「わたし…?」


「ピンポーン!」


「わぁ、素敵。相変わらず絵が上手ですね、フェリシアーノさん」


「名前にあげるよー。今度はもっと大きい紙に描くね!」


「フェリシアーノ、会議中に絵を描くな!!名前も一々構うな!」


ルートの声が響いて、二人でびくりとする。怒られちゃったね、というフェリ君と一緒に苦笑い。




「だーかーらっ、俺がヒーローなんだぞ!!」





個性豊かな国の皆さん。
会議は今日も平和に解散。





へるぷ!


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