ごめん、という言葉だけで何が伝わると言うのだろうか。

「何も始まらなかったわ」

付き合ってください、ごめん、で終わった私の恋。
片思いは一年、ようやく次のステップへ踏みだそうと決めたのは昨日。あの人に呼び出しの手紙を渡したのが今日の朝、そして、全部終わったのはその数時間後。
今から、十五分前の出来事だ。


「名前、頑張ったね!ほんとに残念だった!」
「閻魔、顔が笑ってる。」
「いや、でも本当に良かったよ、いい告白だったんじゃない?」
「笑いたいなら笑えばいいじゃない。ていうか、たった数秒で終わった告白のどこがいいのよ」


実は俺も、とか、友達から、とか。望んでいた答えは沢山あって、その中から選ばれたならなんでも良かった。
答えがごめんじゃなかったなら。
ちょっと考えさせて、だって良かったのだ。どうせ終わってしまうとしても、一日私のことを考えてくれるならそれで嬉しかった。少しだけでも、あの人の目に私が映るならなんだって。


「相手に期待させない、一番良い断り方だよ」
「少しくらい期待させてくれたっていいわ」
「期待させてもなんも良いこと無いよ。相手にも自分にも」
「…経験者は語る?」
「語る語る。」
「ふん。期待させない、なんてモテる奴のこじつけよ。私の事、ちゃんとそういう風に考えてくれたかどうかだってわからない。大体ごめんってなに?なんに対してのごめんなの、付き合ってあげられなくて?好きになれなくて?好きにさせちゃってごめん?なにそれ、意味わかんない」
「こらこら」

閻魔の手が私の頭をポンポンと叩いた。それは違うでしょ、と落ち着いた声がして、同時に少しだけ目の前が滲む。

「…悔しいだけよ、好きだったから」

「…うん」

「私のこと、ちょっとでもいいから好きでいて欲しかったの。好きになってもらえるチャンスが、欲しかった。」

自分でもびっくりするくらい女の子だった、私。興味なかったお化粧だって勉強したし、沢山ファッション雑誌買って、有名な美容師さんにわざわざたっかいお金払ってカットしてもらった。
今流行のパーマだってした、ストレートだった髪はクルクル。
今日だって家出る二時間前から用意して、何回も鏡見て。

「うん。名前、凄く可愛いよ」

それを言って欲しかったのは閻魔じゃないってわかってる。それでもやっぱり嬉しくて、なんだかいじらしい気持ちになる。
閻魔の指が私の髪を撫でる。
自分でも綺麗だと思っていたストレートの髪を、今時な女の子になるために変えた。今の私の見た目はよく言えばモデルさんをそのまま映したようだけど、そこに私はどこにもいない。

「うぐっ…」

泣きたくなんかない。でもどうしたって涙が溢れてくる。
一年想ったのだ。その想いはこれから消さなくちゃ行けない。淋しい、悔しい、悲しくて堪らない。


「名前」

「…っなに」

「可愛いけど、おれは昔の名前の方が好きだったな。」


始まりと終わり


(わたしも、と小さく呟いた)


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