「どうおもうの」


冷たい声だった。
両腕を捕まれて、背中は柔らかいベッドに固定された。いわゆる押し倒された、というこの状況で閻魔君は私にそう言った。
いつも女の子みたいでしょう?と自賛している白くて細い閻魔君の腕は、決して女の子のものではない力が込められている。私は逃げられないことを知ると同時に、彼が幼なじみの男の子から幼なじみの男性へと変化していたことを悟った。

どうしてこうなったのか、今となってはよくわからない。文系の私と理系の閻魔君はテスト前にはこうしてお互いの家で勉強会をする。今だって机には参考書が広がっているはずだし、さっき教えてもらった公式だって頭に残っているから勉強していたのは確かだ。
付き合ってるんじゃないの、と揶揄する友達の声は絶えないけれど、私も閻魔君もそういうのじゃないよって答えていた。きっともう、そうは言えない。


「俺に、こうされて、君は、」


どうおもうの、と閻魔君はさっきと同じ意味の問いかけをした。その声がお互いにびっくりするほど震えていて、私はまだ反射的に抵抗していた両腕から一気に力を抜いた。同じように閻魔君の手のひらから伝わる握力も消える。
残念ながら年齢が彼氏いない歴の私だけれど、閻魔君が他の可愛い女の子と付き合っていたのは知っている。何度か噂を期いたし、さすがにその間は勉強会はできなかったけれど、いつもあっという間に別れるのだ。恋人すらいない私が、もっと大事にしたらいいのにと言えば、閻魔君はやっぱり本当に好きな子じゃないと無理だね、と笑っていた。
今思えば、もしかしたらあれはそういう意味だったのかもしれない。


「自分の気持ちを隠すのが上手いね」


私は少しだけ賭の意味も込めてそう言った。閻魔君はまだ顔を強ばらせたまま、毎日必死だったんだよ、と教えてくれた。あぁ、やっぱりそうだったのか。


「ごめんね」
「ねぇ、閻魔君」


一言謝って、閻魔君が私の左手を離した。でも私がそれを追いかけて、もう一度彼の右手と繋がる。
閻魔君は驚いた顔をしていたけれど、引き下がれないのはこちらも同じ。



「もし、このまま続きしようって言ったら、」




>>
素敵企画「どうおもう」に提出。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -