彼は私を大事にしてくれているのだとわかってはいるのだ。


「っなんで来たんだ!」



久しぶりの再会なのに怒鳴ることない。
そう思いながら私はぼんやりとアルヴィンを見上げていた。


私は弱くない。もちろん、アルヴィンほど強くもないけれど、彼の隣に並んで足手まといにならない程度には戦える。
アルクノアとしてやっていけるように剣の振り方も銃の撃ち方も自然と覚えていた。人を殺したことだって、殺されそうになったことだってある。意識を失うほどの怪我を負ったのだって一回や二回じゃない。
幼かった私は、失敗しなければ学べなかった。何度も死にかけながら、生き方を学んだのだ。きっと死ななかったのは運が良かっただけだ。
私も、アルヴィンも。


「大丈夫よ、私魔物なんかに負けないってアルヴィンも知ってるでしょう?」
「馬鹿…今世界がどんな状況かわかってるのかよ!?」


いつからか私に任されるのはあまり危険のない各都市への潜伏任務だったり、伝令役だったり、武器の必要ないものばかりになった。
それをアルヴィンが仕組んでいたのを知ったのは、最近のことじゃない。
危険なことは全て彼が代わりにやっていた。彼は、私を危険から遠ざけてくれた。

そうしていつの間にかアルヴィンは私なんかよりも数倍強くなって、私はアルヴィンよりも機械や情報操作がうまくなった。


「わかるよ。調べたもの、アルヴィンが危ないってことも知ってる。」
「…っだったら尚更だ、帰れ。」
「嫌だよ。だって私アルヴィンに会いに来たんだよ。」


アルヴィンのコートを掴んだ。振り払われる。
アルヴィンは私に銃を向けた。
眉間に皺を寄せて、アルヴィンは銃口を私の額に当てる。少しだけ震えている。彼の瞳が、だ。


「っ…アル」
「名前、頼む。帰れ」
「私のこと、殺しても良いよ。」
「名前!」


知っているのだ。
アルヴィンはいつ死んだっておかしくない戦いの中にいる。昔からいろんな人を裏切って、利用している彼に敵は多いけれど、今回はいつもとは状況が違う。
世界の、話だ。


「…っ…絶対に、連れて行くから」
「…アル…」
「絶対、お前だけでもあっちに帰すから」


首元を掴んで、引き寄せて。
一瞬だけ目が合う。



そのまま口付けた唇は、涙の味がした。






違うのだ。
私は帰りたい訳じゃない。
ただずっと彼といたいだけだ。




「…幸せに、な」




そんな言葉いらないのだ。


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