「ふふ…あはははは!!!」
ようやく私室に戻って、ずっとずっと堪えていた感情を吐き出した。
おかしかった。
おかしくて、たまらなかった。
俺をこんなに笑わせたのはあの子が初めてだ、声をあげて笑ったのなんて何百年前以来だろう。昔過ぎてわからない。
一人には大きすぎるベッドに寝転んで、枕にまだおさまらない声を押し当てた。
面白すぎる、なんだって言うんだ。
見たかい?あのときの彼女の顔を。いつも自分からはあまり話しかけてくることはないあの子が珍しく俺のところにやって来た。そしたらあの子、
(大王は、あの、好きな方とか…いらっしゃるんですか?)
なんて言うじゃないか!
本当ならあの場で馬鹿かお前はって笑ってやりたかった。
勘違いしすぎている、長く隣に置いておいてやったせいであの子は俺を愚かな人間と同じような存在だと思っている。俺がお前たちなんかを好きになるわけないだろって、嘲笑ってやりたかった。
素敵な閻魔大王である俺はもちろん当たり障りないように、紳士的に対応しましたとも。閻魔大王は恋をしてはいけないんだよ、ってね。そういうルールってことにしてしまえば、文句もないだろう?
更に閻魔大王と人間は次元が異なる存在だって理解してくれたら一石二鳥だったけれど、馬鹿なあの子にはわかってもらえなかったみたいだ。
そうですか…、とあからさまに残念そうにこたえた彼女の後ろ姿は今思い出しても滑稽。
ねぇわからないかな?
俺を好きになったって無駄なんだよ。
だってお前は人間で、俺は閻魔大王様なんだから。
出会った時からお前は死んでいて、俺はお前を裁いてあげた。裁いてあげるってことは次の命に変えてあげるってことだ。もちろん待ち時間はあるけどね。
ただ俺を使って通りすぎていくだけのお前達が、俺は大嫌いだよ。
「はは…もう笑い疲れちゃったよ」
明日、少しだけ気まずそうに挨拶する彼女に会ったら、笑顔で言うんだ。
(名前、今日もかわいいね)
そしたらきっと照れながら笑うだろう。頭を撫でてやれば喜ぶだろう。
彼女とお昼を食べて、恋人みたいに触れあおう。
いつもうるさい秘書も多分なにも言わない。お昼時間なら仕事はないし、俺が楽しんでいるのを知っている。
永久に流れていく時間、俺はこうやって人間で遊んでいる。
もうすぐ彼女の番が来る。
彼女が消えるとき、一度だけキスをしてあげよう。
望むなら抱き締めてあげよう。
最後に、ありがとうって、口にしよう。
俺の玩具でいてくれて、ありがとうって。
神々の遊び
(すぐに全て忘れるあいつらを愛したところで)