「名前・苗字、だな?」
空が赤く染まり、もうすぐ闇がやって来る。
名を呼ばれ振り返れば白銀の髪、蒼色の瞳。私は純粋にただ、美しいと思った。その美しい容姿を持った青年はこちらをじっと見つめて、蒼の瞳が赤く光っる。夕陽が、私を後ろから押していた。
「…シェゾ・ウィグィィ」
「俺を、知っているのか?」
「…アルルに、聞いてるわ。強い力を持った人を探してるんでしょ?
…だったら、そのうち会うと思っていたし。」
シェゾは顔色一つ変えず言葉をきいていた。私は視線を合わせていられなくて、さりげなく目をそらした。…なぜだろう、彼が真っ直ぐだったからかもしれない。私にはそれを受け止める“強さ”がなかった。
「力が欲しいなら、あげるわよ。
…別に、惜しいものじゃない。」
嫌だ、なんて言わない。彼が私の力が欲しいなら結構なことじゃないか。
必要ならば、持っていけばいい。
見知らぬ彼、シェゾ・ウィグィィに私の力をとられたとして私は恨んだりしない。
「…なにを勘違いしてるんだ」
「…勘、違い…?」
「確かにお前の力は魅力だが…目的はそれじゃない。」
シェゾはゆっくり私に歩み寄った。私はただ立ち尽くして、近付いてくる蒼を見ていた。
だめだ、
目が、そらせない。
「…じゃあ、なんだっていうの?私には…なにも…」
「名前・苗字」
頬にかけられた、指が私を止めた。
暖かい、あたたかいのに、怖い、と思った。
だって私には、あなたを、受け止める、つよ、さ、が
「お前が、欲しい」
触れた唇は、優しく、泪が流れた。
それは、
やはり 愛の 、言葉
(言葉は唇に飲み込まれた)