閻魔はキレイだ。
男の人なのに、一般的な顔をしている私なんかより、よっぽどキレイ。
肌は雪みたいに白くて、長い睫毛に大きな瞳。手足も長くて、何を着てもモデルさんみたいだ。

白いTシャツに灰色のパーカー、細い足を更に細く見せるジーンズ。
私が着たら部屋着なのに、閻魔が同じそれを着てソファーに座ると、どうしてか絵になる。
同じソファーの端と端に座った私と閻魔。雑誌に夢中になっている閻魔の顔をじっとみていたら、いきなり閻魔の赤い瞳がこっちを向いた。


「なぁに、俺がどうかした?」


「う、ううん、なんでもないの」


へんなの、と笑ったその顔が、私の胸をきゅんとまた締め付ける。

耐えきれなくて、閻魔の腰にぎゅっと抱き付いた。細いその体は、骨と皮しかないんじゃないかと思う見た目なのに、触れるとそれなりに筋肉があるのがわかる。

閻魔の手が私の頭にぽん、と乗るとなんだか甘い香りがした。


「…閻魔、今日香水付けてる?」


「香水?付けてないよ、さっきシャワー浴びたばっかりだし。」


「そう、?」


じゃあこれは閻魔の匂いなのね、と声には出さずに言った。閻魔の体に顔を押し付けて、息をすると自然に閻魔の匂いが私の体のなかを巡る。
頭を撫でられて、閻魔の温かさと空気と雰囲気と全てに包まれる。

あぁ、なんてこと。
こんなにも近くに閻魔を感じられる手段があったなんて、よくよく思い返せば閻魔の服や使った布団や椅子からもこの匂いがしていたような気がする。
閻魔の香水だろうと思っていたのに、閻魔の匂いだった。
なんでだろう、こんな甘い香りがするなんて。
私が閻魔のことを想うから、甘く感じるのだろうか。それとも閻魔が私の好きな匂いを出してくれてる?なんて、くだらないことを考えた。



「閻魔」


また雑誌に向いていた瞳がこっちを向いて、なぁに、と言う。
包まれる。



「好き」



私がそう小さく呟くと、閻魔は赤い瞳を細めて、幸せそうに笑うのだ。
抱き締められて、閻魔にも私の匂いは甘く感じられていてほしいと、強く思った。



カブトムシ



(きみのかおりに、つつまれる)





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