12月25日夕方六時。
ふと目覚めると窓の外は真っ白な白銀の世界だった。




隣で寝ているイリアに雪だ、と声をかけた。寝起きの悪い彼女はそう、と言っただけ
でベッドに戻ってしまったけれど私は部屋を飛び出して、廊下の窓を開ける。
やはり、そこは銀世界。響き渡るジングルベル。まるで、別の世界のようでなんだか
ドキドキした。



昼間レグヌムに着いて、船旅と連戦の疲れから私達は宿に直行就寝した。レグヌムは
緯度が高い、冬になればそれなりに雪も降る地域だ。
時間を見れば六時、着いた時に雪は無かったから夕方になって降り始めたのだろう
か。



「スパーダ、スパーダいる!!?」


彼の部屋の前でトントン、と扉を叩きながらそう叫べば、ドアの向こうでルカの声が
した。少しして翠色の髪をかきあげながらスパーダがドアを開けた。



「あぁ?どうしたんだよ、…ふぁあ…まだねみぃぜ。」


「雪降ってるの!町回ってみようよ!」



スパーダの手がすっと伸びてきて、私の頬を掴んだ。というかつねられた。
痛さにスパーダの手を両手で押して、抗議の声を上げた。



「い、痛いってば!!なぁに、いきなり!!!」


「バーカ、ンなことしたらまた捕まんだろうがよ!
リカルドが町で役人見たんだと、今日は絶対に外出るなってよ!」


特に俺達は、と念を押すスパーダ。なんだかやつあたりされたようで、頬を抑えなが
らスパーダを睨む。


「だからってつねることないでしょー?やつあたりしない!!」


「わ、悪かったって……」


「でも…クリスマスなのに外出禁止、かぁ。イブだって船の上だったのに…」




私達の旅にはクリスマスもお正月も関係ないけれど、せっかく町にいるのにクリスマ
ス気分すら楽しめないなんて。ホワイトクリスマス、もったいないにも程がある。



「雪遊びくらい、したかった。」


「ガキか」


「うるさい、不良」



窓から降り積もる雪を眺める。きっとクリスマスだから余計に役人が警備しちゃって
るんだ、なんて思っているとなんだかどこかに閉じ込められたような気がしてくる。

スパーダの手が肩に回って顔を近付けられた。びくっとして彼を見ると意地悪そうな
笑みを浮かべてそっと囁いた。



「…抜け出そうぜ」

「え?」


「12時に、玄関な。」


「本気?ていうか12時じゃクリスマス終わってるよ!」


「馬鹿、そんな細かいこといーんだよ!
それにクリスマスの夜になんも無しなんて有り得ねぇだろ?」


腕を解いてスパーダは窓を閉めた。急に辺りがしんとして、空気が少し固くなった。



「そう…だよね!やっぱりクリスマスだもんね、雪遊びと言わず王都の最大のイルミ
ネーションくらい見てもバチは当たらないよね!」


「だろ?12時に玄関、見付かんなよ!」



もう一度時間と場所だけ言って、スパーダは部屋に戻ろうと踵を返した。



「あ、プレゼント、期待してる!」


「……あぁ、最高のクリスマスにしてやるよ。」


「…キザな台詞。なんも用意してないくせに!」


「ほっとけ!!」




自然と笑みが溢れた。
さぁ、私達のクリスマスまで残り6時間。





12時からは、シンデレラ。
(少しだけときめいたから、少しだけ楽しみにしてあげる。)



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