「あのね」
あの馬鹿が、ハスタが死んだ。俺達が殺した。
胸にあった何かが取れてスカッとした感じと、小さな喪失感。多分どちらかといえば喜びみたいなモノの方が多かったのだと思う。
でも
「こんなに悲しいなんて思わなかった。」
それはこっちの台詞だって、言ってやりたかった。
彼女がそう言っただけで、喜びが何かに変わる。あいつを想って涙を流し、あいつのために祈る彼女を見る度にこの気持ちは大きくなっていく。
悲しくて、苦しくて。
ふざけてる、あいつをうらやましいって思うなんて。
あいつに、嫉妬してるだなんて。
ぽん、と彼女の頭に手を置いて、無理矢理に笑った。
「何、泣いてんだよ。あいつは数えられないほど人殺したんだぜ?」
「わかってるよ。
わかってるけど…あたし…」
名前。
お前は優しい、でもそれは優しいからだけじゃないだろ?昔から、前世からそうだ。前世でもアスラと俺に破れたゲイボルグの事を、何度も何度も尋ねて来て。戦いに狂ってしまったゲイボルグを想い、デュランダルのようになってくれれば、なんて言葉を残していた。
「ハスタと、生きれなかったのかなぁ。」
「…あいつはあいつで幸せだったんだ。もう、考えんのやめとけって。」
「……でも、ハスタはハスタ自身として生きれたの?
ゲイボルグに、生かされてなかった…?
」
また彼女は涙を流す。
きっと世界で彼女だけがあいつを想って泣いている。あいつの事を悔いている。
こんなに彼女に想われていたのをきっとあいつは知らない。知るはずがない。
「…また、同じだった。
ハスタは、槍じゃなくて人間だったのに。人間として生まれてきたのに、武器みたいな生き方。
戦って、戦って、戦って」
「名前」
「私が止めてあげればよかった。前世でも後悔したのに、なんで」
「名前!!
…もうやめろって。」
「…っ…」
これ以上、言われたら
あいつに嫉妬しすぎて狂っちまう。
だからお願い、もう泣かないで。
あいつのために、もう祈らないで。
「…スパーダ、私」
そうなんだ、
だから俺は、あいつのことが
「…ハスタと幸せになりたかったな。」
大嫌いだ。
願い、星
(ハスタと、笑ってみたかった)
(あいつをもう、忘れて)