なんだか目の前で凄い事が起きた。
もしかしたら人生最大のピンチって奴だったのかもしれない。

まだ暗くはないのに人がいない路地裏にこんななんの取り柄もない少女が一人。手には鞄、そして学生服(といっても私服だけれど)。それなのに、周りには恐いお兄さん達が私を見てにやついていた。武器も何もないし、連絡も取らせて貰えるわけもない。



明らかに身体精神貞操の危機!と言わんばかりで、体全体に震えが走った。


(これって絶対ヤバイよね…。私これからどうされちゃうんだろ。とりあえず何発か殴られて、抵抗しなくなった所をどこか人目につかない所に連れていかれるわよね。もしそうなったらその後はおそらく…嫌!考えたくもない!でも心の準備をしといた方が後々楽なのかも…。あぁ、どうにか逃げれないかな、いち、に、さん……七人か。無理ね、私足遅いし。)



だんだんと男の手が私の方に伸びてきた。




ああ、もう。

こんな風になるならファーストキスくらい済ましておくんだったかなぁ、今まで好きになった人に一回でも告白しておけばよかったのかも。
こんな時、呼ぶ名前すら私にはない。



(助けて、助けて、助けて!!)



首元を掴まれて、もう声も出なかった。






「てめぇら、楽しそうなことしてんじゃねぇーか。」



「っ…」





まるでおとぎ話のように、現れたのは綺麗な灰の瞳をした青年。こちらを見てニヤリと笑みを浮かべて、かなり悪そうな顔をしていたけど、それはまるで



(王子、さま)






気付いた時には私と緑髪の王子だけ。助かった、というのと、彼に感じた大きな想いでいっぱいだった。


地面に血を吐き捨てて、あー、と声を上げる彼に座ったまま近付く。




「あっ…あの…」



「あ゛…?」




最大のピンチが最大のチャンスに変わったのかも、もしかしてこれは運命の出会いか…?なんて想いを巡らせて、息を呑む。どこぞと知らないチンピラに絡まれて、知らない男性に助けられるなんて運命的過ぎる!


助けてくれて、ありがとう。とりあえずはそれだけ伝えたくて、口を開いた。







「…てめぇ、なんだ…?」






一方的に王子様!
(存在すら認められてなかったとは…!でも諦めない、私の名前は…)
(随分な雑魚だったぜ、腕がなまっちまう。)



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