貴方には、もううんざりなのです、レッドさん。
「…いこう」
一応は誘いの言葉。
私の存在を認めてくれている、幸せを感じる言葉。
食事がとても早いあなたが、口にパンくずを付けながら言う。私は慌ててお茶を飲み干して、ハンカチを片手にあなたを追う。
パン付いてます、レッドさん。
そうハンカチを差し出すと、それを受け取りはせずに袖で口許をぬぐった。
「ここでまってろ」
はい、という返事以外は求められない命令の言葉。
山や洞窟なんか強いポケモンがいるときは使われる。確かに次の町に行くには森を越え、洞窟を越えなければならない。
その間数日間私はポケモンセンターで留守番。
それじゃあ一緒に旅してる意味ないです、となんど繰り返したかわからない。
でもその度レッドさんは俺がお前を守れるくらい強くなったらな、と笑うの。
そして、次の町に行ったレッドさんはリザードンに乗って、私を迎えに来る。置き去りにされるのは、少し寂しいのだけれど。
「ちょっと行ってくる」
レッドさんはジムに挑戦する。
行ってらっしゃい、と笑って送り出して、その間に私は次に向かう町について調べたり、買い物をしたり、レッドさんのポケモンの管理とかをする。
私は一体レッドさんのなんなんだろう。
ただの同行者。
世話係。
私は人扱いされている?
そんなことを考えているとレッドさんは帰ってくる。その無表情さからは結果は伺えない。どうだったのかと恐る恐る聞くと、ポケットからバッヂを取り出して私にくれた。
それをケースに入れながら思ってしまう。
こんな大切なものを預けられている私はきっと特別なんだろうって。
「好きにすればいい」
私が何か提案するとレッドさんはこう言う。
私がこうしたい、ああしたい、と言えば大抵はこう。でももちろんジム戦を見せてはくれないし、一緒にポケモンの特訓をさせてはくれない。
危険だから、なんてありきたりな理由。
でも一つだけ知ってる。
「…レッドさん、私、旅やめてもいいですか」
「…だめだ」
「なぜ?」
「必要だからだ、お前が」
「便利だから?」
「違う」
「私がいなくても別に平気ですよね?」
「まぁ、それは」
「じゃあなぜ?」
「嫌だからだ」
「…え?」
「お前が俺のそばにいないのは、いやだ」
ちるどれんYou!!!
(いつになったら解放されるの!)