裏切り、嫉妬、浮気。

そんなもののない、幸せで、綺麗な日々を夢見ていたあの頃。
私が純粋で、幼くて、馬鹿だったあの頃。

世界は白で溢れていて、黒は見えなかった。

誰かに守られていたんだろうか。私が黒に染まらないように。
だとしたら申し訳ない。






今、私の世界は黒い。











そう、最初すきだったのは仙蔵だった。
あの整った姿形に惚れた。自分もあんな風になりたかった。一目惚れで、話してみたら見た目通りの奴で。
外見だけじゃなくて成績もよく
て、周りから憧れられて、先生うけも良くて。

好き、じゃなくて羨望だったんだろうね。
それでも彼は私の初恋として、心の中にいる。






そして、私は小平太に恋をした。
太陽みたいに笑って、元気で。一緒にいるだけで私は笑顔になれていた。


でも仙蔵が好きなはずなのに、彼を想っている自分が嫌いだった。


汚かった。

好きな人が二人、なんて汚すぎる。消滅してしまいたいくらいに自分を嫌った。
たった一人を心から永遠に愛する、なんて。
……できるわけないと今の私は知っている。それがわかったのはこの時だった
んだろう。







そして今現在深夜。





「…名前…?」





私は留三郎と床についていた。




そっと彼に手を伸ばし、微笑む。


罪悪感でいっぱいだった。
表情にそれは現れない。
私は埋もれてしまったんだろうか。真っ黒な海、大人、そう呼ばれる所へ手を伸ばしてしまったんだろうか。
もう、足は半分以上見えない。








…そういえばこないだ伊作に告白されたっけ…明日はそっちに行ってみようかな。










黒く染まる

(これが悲しいことくらいわかってる)

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