彼女にただ一声、挨拶したら始まることだ。おはよう、いつもこの時間だね、よく会うね、そんなたわいもないことで俺達の関係はクラスメイトから友人に変わるはずなのに。
ピンとした背筋で俺の前をゆっくり歩く彼女を、また俺は見ているだけ。可愛らしくて、正義感が強くて、皆から好かれる彼女を、俺は好きになった。今日こそ、明日こそ、そうやって過ぎる日々。教室でも、帰り道でも、この登校の時間でも、ただ彼女を眺めているだけの俺は、何て情けないやつなんだろう。
ひらり。
彼女がポケットから携帯を取り出した瞬間、ハンカチが地面に落ちた。
すぐに拾う俺。これこそ、神様からの贈り物。
なんと言えばいいんだろう。足が震えた。
ぎゅっとハンカチを握り締める。
立ち止まる俺、見えなくなる彼女。
言えない、呼べない、渡せない。

「…意気地無し」

このハンカチは明日、俺と彼女を繋げてくれるんだろうか。



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