いつもよりちょっと大人びた服とメイク。その服に合わせたヒールの高い靴をはいて玄関先の鏡を見る。

(よし、大丈夫変なとこはない!)

そう信じて自分に自信をつける。毛先にかけたパーマがふわりと揺れた。
ふと時計を見るともう既に午後の1時を指している。勇作さんとの待ち合わせ時間は1時半…ヤバい遅刻する!久しぶりの勇作さんとのデートに遅れる訳にはいかないと、私は慣れないヒールで走り出した。


(こういう時に限って電車目の前で逃すし!)


待ち合わせ駅に着いた時にはもう既に1時27分という時間を指していて、気持ちばかりが焦る。もう一本早い電車に乗れたらもっと余裕を持てたというのに…まあ私がちゃんと時間を確認してなかったのが悪いんだろうけど。
階段を駆け降りながら勇作さんを探す。勇作さんは大きいから、探すのは結構簡単だ。身長の高い勇作さんと比べて私はどちらかというと小さい方で、勇作さんと並ぶとまるで親子くらいの身長差になる。普段は気にしないようにしているけど、ふとした時とか…やっぱり気になってしまう。せめてもう少し身長があったなら、なんて。そう思ってしまうから勇作さんと会うときは普段より高めのヒールを選んでしまうのかもしれない。たかだか数センチの違いで何かが変わる訳ではないけれど。


そんなことを考えながら勇作さんを探す。階段を一段一段下りながら周りを見渡せば、階段近くの柱に寄りかかっている勇作さんを見つけた。勇作さんも私に気がついてくれたみたいで、私の方を見ては軽く笑ってくれた。やっぱり勇作さんはかっこいいなぁなんて思いながら歩いていると、一瞬私の体が宙に浮いた。ガクッと体のバランスが崩れる。慣れないヒールでうまく階段を踏めなかったのだろう。あ、階段を踏み外したんだ。そう頭が判断する頃には体は言うことを聞いてくれなかった。私はギュッと目を閉じて、来るであろう痛みに耐えようとした。

けれど感じたのは衝撃や痛みではなく、あたたかな感触。恐る恐る目をあけて見上げると、そこには勇作さんがいた。


「はぁ…びっくりしたよ。いきなりなまえが落ちてくるから。」


間に合って良かった、と勇作さんはため息をつく。ご、ごめんなさい!と謝ると勇作さんは気にするなよと私の頭を撫でてくれた。こういう優しいところ、凄く嬉しいけどちょっとだけむぅ…と思ってしまう。子供扱いされているようで何だか嫌だ(勇作さんと年が離れているのは事実だけど)


「……」

「?勇作さんどうかした?」

「あ、いや…今日のなまえは何だか雰囲気違うなって。」

何か変な感じだ、と彼は言う。も、もしかして似合わないのかな?と急に心配になってきた。
そんな考えが顔に出てたのかはわからないけど、勇作さんは少し焦ったような声を上げる。


「今日のなまえも可愛いんだけどさ、俺はいつものなまえの方が好き、かな。」

ありのままのなまえが一番可愛いよ。

なんて…


(〜〜っ!勇作さんの天然たらし!!)



勇作さんの言葉に顔が真っ赤になる。こういった言葉をさらっと言える勇作さんは本当にズルい。いつも私ばっかりドキドキさせてもっと勇作さんのこと好きにさせるんだ。


「勇作さんのばか!大好き!」

「知ってるよ。」


ほら、行こうか。と差し出された手を取って二人で歩き出す。いつもと違うなまえとデートっていうのもいいかもな、なんて勇作さんが笑うから、何だか私もつられて笑ってしまった。

ちょっとだけ背伸びして勇作さんに少しでも追いつきたかったけど、今のままの私でもいいんだって少しふわふわした気分で勇作さんの腕に抱きついた。
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