午後8時。空も暗くなり始めて街灯の光がアスファルトの地面を照らしていた。1日の仕事も終わり、俺は自宅への帰路につく。今日も氷室先生に叱責されてしまったが、その反省を生かしてまた明日からしっかりと生徒達に向き合っていこう!


家までもう少しという距離まで来て、家の窓から光が漏れていることに気がついた。朝出掛けるときに消し忘れただろうか。いや、今日の朝は照明を使った記憶はない。もしかして、なまえが来ているのだろうか。俺ははやる気持ちを抑え、少し駆け足になりながら自宅へと向かう。

ただいま、と言うもののなまえの返事はなかった。本当に俺の電気の消し忘れだったのだろうか。首を捻りながら部屋に入るとソファーで寝ているなまえの姿があった。その顔から見るに疲れていたのだろう。ここ最近はレポートやテストが重なっていたようで忙しいと言っていたから、俺もあまり連絡をしないようにしていた。ここに居るということは少しは一段落ついたのかもしれない。久々に見るなまえの顔に安心しながら、頭を撫でる。あぁ、このまま寝ていたら風邪をひいてしまうかもしれないな、と俺は寝室から毛布を一枚持ってきて彼女にかけてやった。


*


「ん…あれ…?」

なまえの声が聞こえて振り返ると寝ぼけたような表情で彼女が俺を見ていた。まだ頭が覚醒していないのだろう。

「おはようなまえ。何だぁ寝坊助さんか?」

笑いながらそう言うとなまえは飛び起きるように上体を起こした。「あれ?力さん?何で?」と脳内が疑問符でいっぱいになっているみたいだ。料理をするためにつけていたエプロンを外しながらとりあえず顔洗ってきたらどうだ?と一言。はい…そうします…となまえは立ち上がった。



「テスト終わって少し気が楽になったら力さんに会いたくなって…」

「待ってるうちに寝てた、と。」

「はい…その通りです…」

俺がさっと作った夕飯を食べながら(ちゃんとした料理なんて出来ないからおおざっぱなものだけどな)なまえの話を聞く。なまえは何だか申し訳なさそうにしていたが、なまえが真っ先に俺に会いに来てくれた事が嬉しかった。何だかんだでここ何週間か会ってなかったんだ。俺だって寂しかった。まぁそれを面と向かって言うのは照れくさいから何も言わないでおくけども。

「もう山場は越えたのか?」

「んーっと、後は今週末提出のレポート一個終われば大丈夫かな。」

「そうか、後少しじゃないか。頑張れ!気抜いて提出期限破るんじゃないぞ?」

「ふふっ、はーい大迫せんせ!」

思わず教職を取っている者としてか、生徒に言うような口調になってしまった。そんな時なまえはふざけ半分かもしれないが俺の事を先生と呼ぶ。もう先生と生徒という関係では無いのに、少し昔に戻ったように感じてしまう。そんな考えを払拭するようになまえに話しかける。

「そうだ、日曜日何か用事あるか?」

「日曜日?何もないけど…」

「久々に二人で出掛けるか?テストお疲れ様記念ってことで。」

「行く!行きます!」

そう元気よく答えるなまえが可愛くて、思わず笑みがこぼれた。行きたいところがあったら考えておけよ、と言って夕食の箸を進めた。ここ何週間か会えてなかった分も含めて目一杯なまえを甘やかしてやろう。そう考えたら週末が待ち遠しくて、待ちきれない。
あぁ、早く週末にならないだろうか。
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テーマ「人外ファンタジー」
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