「それじゃあ今度の日曜にバス停前で待ち合わせね!」 そう謙也くんと電話越しに約束したのが1週間前。ちょっと勇気を出して、遊園地デートなるものに誘ってみた。きっと断られるだろうなって思ってたのに帰ってきた返事は「おん、ええよ!」という明るい声で。この一週間ずっとそわそわしっぱなしだった。どんな服着ていこうかな謙也くんどういう感じの服装好きかな、なんて。 この前一目惚れして買った花柄のチューブトップにデニムのミニスカートを合わせる。それだけじゃ今の時期は絶対寒いからお気に入りのリバーシブルパーカーを羽織ってみたり。このパーカー猫耳ついてて可愛いんだ。 …変じゃないかな?大丈夫かな?遊園地デートだから動きやすい恰好の方がいいかなって思って服を選んだけど、ちょっと可愛げないかなぁ。いや、でも少しでも女の子らしさ出そうって滅多にはかないミニスカとか選んだんだし、きっと大丈夫。そうだ大丈夫だ。リボンのヘアゴムで髪をまとめてポニーテールに。この服装ならパンプスよりスニーカーの方が似合いそうだ。 いってきます、と家を出る前に最終チェック。忘れ物なし、化粧もナチュラルに出来た。ふぅ、と大きく深呼吸して心を落ち着ける。ちらっと時計を見ると待ち合わせの時間まであと20分もない。バス停まで10分以上かかることを考えるとちょっとのんびりしすぎた! 急いでバス停に向かうとそこにはもう謙也くんがいた。誘っておいて待たせるなんて最悪だ!まだ待ち合わせ時間まで5分くらいあるけど。携帯を見ながら立ってる謙也くんもかっこいいなぁ。遠目から見てもにじみ出るイケメンオーラってやつ?なんてトリップしてる暇はないよ自分!「謙也くん!」と声をかけると彼は顔をあげてくれた。 「ごめんね、待った?」 「今着たとこや、なまえは時間ぴったりに来るんやな」 そう言って笑う謙也くん。その笑顔が眩しすぎて直視できない…! それに謙也くんの私服!制服の時からかっこいいのは分かってるけど私服の破壊力はさらに抜群だ。灰色のパーカーにネイビーのVネックTシャツ。さらっと履きこなしてるのはちょっと高そうなジーンズ。腕にはミサンガかな?シンプルなのに地味に見えないっていうか着こなしてるっていうかすごいかっこいい! ぼぉっと見惚れるように謙也くんを見ていたら「そんな見つめられたら照れるんやけど」なんて言われてしまった。ごめんなさい!って謝ったけどこれは謙也くんがかっこよすぎるのが問題だと思うの。なんて言えるわけもなく心の中で思うだけ。 そんな私に対抗したのかわからないけど、なぜか謙也くんも私の上から下へと目線を移動させる。なんかじっと見られているようですごい恥ずかしい。 「なんや自分、今にも走り出しそうなカッコしとるやん」 「へ…変、かな?」 「いや、ええと思うよ。なまえに合うとる」 まじまじと見られた後にそう言ってもらえて、もうそれだけで天にも昇る気持ちだ!頑張って服選んできてよかったなぁ。 それから二人でバスに乗っていざ遊園地へ。やっぱり日曜日だからか遊園地内は人であふれかえっている。下手したらはぐれちゃったりしそうだなぁなんて少し不安になる。隣の謙也くんを見るとすごいきらきらした顔で園内を見ていた。遊園地、すごい来たかったんだなぁって感じでなんだか可愛い。 「なぁなぁ、まず何から行く?」 「やっぱり定番のジェットコースターじゃないかなぁ」 「せやな!遊園地来たらまずはジェットコースター乗らんと来たって気せぇへんしな」 ほな行くで!と今にも走り出しそうな謙也くんを追いかける。謙也くんが本気で走り出したら絶対追い付けないのは分かってる。けど追い付けるってことは謙也くんも私のペースに合わせてくれてるんだってわかった。そんなちょっとした気遣いをしてくれる謙也くんはやっぱり優しいなぁって思う。 ジェットコースターに乗るまでの待ち時間もたわいもない話をしながら待ったりして。クラスではどうだとか、テニス部でこんなことがあったとか。謙也くんはいつも人の中心にいるような人だからそういった話題に尽きない。聞いてるだけでもすごい楽しくて、自然と笑みがこぼれる。 あと少しで乗れるなぁってところまできたときに、ふと謙也くんが真面目な顔をした。どうしたの?って聞くと少し言いづらそうに、あー、とかうーとか言葉を濁す。なんだか少し顔も赤い? 「あーなまえ…大丈夫なん?」 「え?何が?」 「だからそのー…」 そう言う謙也くんの視線の先は私の足。というかスカート…? 「こう…風でぺらっといったりせぇへん?」 「し、しないよ!!…たぶん」 「たぶんってなんやたぶんて!なまえは女の子なんやからちゃんと気つけなアカンで?」 こういう時にちゃんと女の子扱いしてくれる謙也くん。どれだけ私をときめかせたら気が済むんだろうこの人は!些細な気遣いがさらっと出来ちゃうあたり本当にかっこいい。これで自分がモテてないって思ってるんだから本当性質が悪いよ…。まあ確実にいつも一緒にいる白石くんのせいだとは思うけど(あの人は色々と完璧すぎて逆に怖いなぁ) そんな会話も交えつつ、ジェットコースターに乗る。乗った後はもう二人でぎゃーぎゃー騒ぎつつこのスピード感を全力で満喫した。あの風を切る感じとか、ふわっと浮いてしまいそうな感覚とか、ちょっとの恐怖心とそれを上回る楽しさがジェットコースターの魅力だ。 「ホンマ楽しかったな!」「うん!もう一回乗る?」「おん!」とか、そんな感じでジェットコースターに何回も乗ってみたり、お化け屋敷に入って二人で悲鳴あげたり、ちょっと休憩ってアイス食べたり(謙也くんは苺とバニラをダブルで頼んでたなー) 気が付いたらあっという間に時間は過ぎていて、もう日が少しずつ暮れ始めてきていた。 「もうこんな時間かぁ」 「あっちゅー間やったな」 謙也くんとの遊園地デートは本当に楽しくて、あっという間に一日が終わってしまった。あぁ今日がいつまでも続けばいいのに、なんて思っても時間は無情に過ぎていく。 「今日、楽しかった?」 「おん、めっちゃ楽しかったで!また一緒に来ようや」 そう笑顔で答えてくれた謙也くん。よかった、楽しんでもらえたみたいだ。また、なんて口約束だけど謙也くんからそう言ってもらえてすごい嬉しい!遊園地もいいけど今度は違うところも行きたいね、なんて聞くとそれもええな、動物園とか水族館も楽しそうやんな!って。また、謙也くんをデートに誘ってみよう、なんて勇気がもらえる。 「帰り送ってくで」 「え?でも悪いよ、謙也くん遠回りなっちゃうよ?」 「ええねん、俺が送っていきたいんやから。な?」 そんなこと言われたら断れるわけないじゃん…。じゃあお願いします、って深々と頭を下げると「なんやその他人行儀!」なんて笑われちゃった。 帰り道もいろんな話をして、本当に私の家の前まで送ってもらっちゃった。ありがとう、って笑うと謙也くんも笑って「また明日な!」って手を振って帰っていく。あぁ、今日は本当に楽しい一日だった!明日からの一週間、また頑張れそう! と、いう夢を見たんだが…まるでときメモじゃねーの…。 * 夢落ち企画からサルベージ |