「たくやのおじさんだー!」

そう言って俺のもとへ駆け寄ってくる子供。その後ろでなまえが慌てたように追いかけてくる。俺は笑いながら駆け寄ってきた子供を抱き上げた。

「久しぶりだなレン。随分大きくなったじゃないか」

「えへへーぼくもう5さいなんだよ!」

「もう5歳か、早いものだな…」

ごめんなさいね、この子やんちゃで…となまえが私に謝る。元気が有り余っているのか腕の中のレンはバタバタと暴れまわるように手足を動かす。別に構わないさ、となまえに言って、俺は家に上がらせてもらうことにした。
なまえの息子であるレンは、どうやらとてものびのびと成長しているようだ。仕事が忙しいからなかなか顔を見に来る事は出来ないけれど、こうしてたまに会うときににこの子の元気な姿を見ては安心をする。遊んで遊んで!とせがむレンは本当に可愛らしい。

「あのねあのね!ぼくこんどね!おゆうぎかいでおうじさまやるんだよー」

「へぇすごいじゃないか」

「でしょー?」

だからおじさんもぜったいみにきてね!とレンは俺の手を取ってぶんぶんと振りまわす。拓也も忙しいんだから無理言っちゃだめでしょ?となまえは俺からレンをべりべりと効果音が付きそうな感じで引き離した。
ちゃんと母親をしているなまえを見るとなんとも複雑な気持ちになる。一人でこの子を育てている彼女は一体どんな思いをしているのだろう。アイツが死んでからもう6年が経とうとしているが、彼女も俺も、アイツの事を忘れることなく今まで生活してきた。この場所にアイツもいたならどんなに幸せなのだろう。アイツがいてなまえがいてレンがいて。その家族を見てみたかった。叶うことのない空想にすぎないけれど。

「そのお遊戯会はいつなんだ?」

「え?でも忙しいんじゃないの拓也…」

「まあ…なんとかするさ。俺がレンの晴れ舞台を見たいだけだからな」

はは、と笑うとレンも俺の真似をしたのか同じように笑おうとしていた。そんなレンを見てなまえが笑う。レンが生まれてから、彼女は昔のように笑う事が増えた。きっと、アイツのことも乗り越えて今を生きているのだろう。
日に日にアイツに似てくるレンを見ると、まるでレンがアイツの生まれ変わりのようにも思える。ここに、確かに、檜山が生きていた証拠があった。

「ぜったいだよ!おじさんやくそくだからね!!」

「あぁ、分かった。約束だ」

ゆーびきりげんまん、と楽しそうにレンが言う。はは、これは本当に頑張って日程を調整しなければな。霧野さんにまた迷惑をかけてしまうだろうか。けれど、可愛いレンとの約束を反故にするわけにはいかない。
なまえは申し訳なさそうにしているけれど、これは俺が好きでやっていることなのだから。



アイツのかわり、というわけではないがなまえとレンをずっと見守っていきたいと思うのは自分のわがままだろうか。
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