早いもので母さんが死んでからもう10年近く経とうとしてる。母さんと過ごした時間より拓也さんと過ごした時間の方が長くなったよ。
母さんが死んだとき、すげぇ辛かった。オレも一緒に死にたいとか考えるくらいには、な。でも拓也さんがいたから、拓也さんがオレを必要としてくれたからオレは今こうして生きてる。
なぁ、母さん。オレさ、やっぱり父さんを好きにはなれないよ。母さんをオレから奪ったのは父さんだと思うから。拓也さん曰く、成長していくにつれてオレはどんどん父さんに似てきたらしいけど、正直全然嬉しくない。あ、嘘。ちょっとは嬉しい。だって父さんに似てるって事は母さんはきっと今のオレを見たら喜んでくれるだろ?

オレさ、今父さんと拓也さんが卒業した大学でLBX工学勉強してるんだ。父さんと、母さんと、拓也さん。3人を繋いだLBXの開発、オレもやってみたいって思ったから。拓也さんも好きなようにやればいいって言ってくれたから、拓也さんの期待を裏切らないように頑張ってるよ。まだまだ母さんたちの足元にも及ばないけど、いつか父さんや母さんみたいな…いや、二人を超えるLBX開発者になれたらっては思ってる。今日はその誓い、みたいなもんかな。オレがくじけないように見守っててよ、二人でさ。きっと父さんと母さんはそっちで二人仲良くやってるんだろ?二人で仲睦まじくやってるのもいいけどたまにはオレの事考えろよ?オレは、父さんと母さんの、二人の息子なんだからさ。絶対、二人をぎゃふんと言わせるくらい有名になってやるから、覚悟しとけよな!

あぁ、拓也さんは今も相変わらず独り身なんだぜ?結婚しねーの?とか何回か聞いてみたけどマジでする気ないらしくてさ。拓也さん曰く「なまえよりも好きになれる人がいたら結婚してもいいんだがな」って。でも拓也さんの中で母さんと父さんを超える人なんで出来ると思えないんだよなー…。今でもたまに二人の話題になるよ。色々話聞いたぜ?初デートで父さんが緊張しすぎて1時間前から待ち合わせ場所で待ってたとか、二人の痴話喧嘩に拓也さんが巻き込まれて大変だったとか。父さん的には聞かれたくない話をたくさんな。父さんはそっちで頭抱えてればいいよ!オレらから色々持って逃げてった罰ってやつでも今頃感じてればいいんじゃね?なーんて。
まあ、霧野さん的には拓也さんが結婚しないのは結構困ってるみたいだけどな。会社の跡継ぎがどうのこうのって。もし、本当に拓也さんが子供作んなかったら、オレが継ごうかなーなんて、思ったりしなかったり。拓也さんが頑張って守ってきたTO社を、オレも一緒に守っていきたいんだ。TO社は二人にとっても特別な場所だろ?だから、さ。あ、これまだ拓也さんには言ってないんだ。一番最初に二人に報告しとこうかなーなんて。正直拓也さんになんて言われるか不安でしょうがないんだけどな。でもこればっかりは拓也さんに反対されても貫き通したい。拓也さんはオレの好きなように生きろって口癖みたいに言うけど、考えて考えて、オレはこの道を選んだから。少しでも拓也さんに何か返したいんだ。二人は賛成してくれるよな?



「随分真剣に話しこんでるな、レン」

「まぁ、ね。母さんと父さんに色々報告しとこうかなーって」

「そうか」

オレは母さんの墓の前から立ち上がり、拓也さんの方へと向く。いつの間にか拓也さんと目線が一緒になった事に気付いたのはいつだっただろう。身長はほとんど同じくらいだけれど、オレは拓也さんを越えられる気がしない。オレの中で拓也さんは何よりも大きい存在で、拓也さんがいなかったらオレはどうなっていたんだろうとたまに考える。きっと、母さんも父さんも憎んで、今みたいに墓参りに来ようなんて思えなかったはずだ。本当、拓也さんの存在がオレに与えた影響は大きい。

「ん?どうしたレン?」

「いや、オレにとっての父さんってほんと拓也さんだなーって改めて思っただけ」

「何をいまさら…恥ずかしいじゃないか」

軽くポカっと頭を叩かれた。でもなんか嬉しそうな顔をしてる拓也さんを見たらオレまで嬉しくなってきた。お互い顔を見合わせて笑った。オレと拓也さん。血は繋がってないけど、お互いに家族だと、親子だと、胸を張って言える。

「そろそろ帰るか、少し暗くなってきたしな」

「了解、義父さん!」




なぁ母さん。オレは母さんが拓也さんを選ばなかったこと、今でも不思議に思うよ。ずっと後の話になるけど、オレがそっちに行ったら父さんの良さっていうの、今度はちゃんと教えてくれよ?それでもきっと拓也さんの方がいい男だって、オレは思うけどな!
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