戦闘終了!

無機質なCCMの音声が聞こえた。目の前にあるDキューブの中で今バトルが終わったのだ。スタンダードレギュレーションでやった今のバトル、Dキューブの中に立っているLBXは俺のGレックスだ。

「またオレの勝ちだな!」

「くっそー、レンお前強すぎだろ…最近始めたばっかのくせに」

以前は周りがやってるのを見てることしかできなかったLBXバトルだけど、郷田さんからGレックスをもらってからはこうやってみんなとバトル出来るようになった。母さんにコアボックスのカスタマイズとか見てもらったりして、自分なりにカスタマイズを重ねていく。このモーターを使ったらGレックスはどんな風に動くんだろう。そんなわくわくが止まらなくて、時間が有る限りオレはGレックスをいじっている気がする。そのおかげかは分からないけれど、仲間内ではいつの間にやら一番強くなってしまったみたいだ。きっと、このGレックスの機体性能も高いんだろう。家にあったいろんなLBXも見せてもらったけれど、コイツとは全然スペックが違う。父さんがカスタマイズしたというGレックス。父さんは本当にLBXが強かったんだな、と思う。
初めて、父さんという存在が自分の中で確立した。拓也さんと仲が良くて、母さんが今でも好きな、父さん。今まではそれくらいの認識でしかなかったけど、もしかして父さんはすごい人だったんじゃないかって思うようになった。郷田さんも父さんのこと、尊敬してるみたいだし。もし父さんが生きてたら、一緒にバトルとか出来たのかな。

「でもGレックスなんて珍しい機体、よく見つけたよなー」

「そんな珍しいんだ、Gレックスって」

「珍しいってもんじゃねえよ!多分世界に1機しかないはずだぜ?オレらが生まれる前に活躍してたっていう伝説のLBXプレーヤー、レックスの機体だろ?」

そんな機体マジうらやましいぜ!と叫ぶ友人。こいつマジLBXのことなると目の色変わるなぁ…いろんなこと知ってるっていうか、すげぇなぁ。Gレックスのメンテナンスをしながら話に耳を傾ける。噂じゃGレックスで滝を真っ二つにしたらしいぜ!とか根も葉もないことを言っている。まあ噂ってのはそんなもんかぁ。

「なぁ、レックスの話してんの?」

そう言ってオレらの輪に入ってきたクラスメイト。確か…沢村だったか。普段オレたちのグループとあんまり関わってこない奴だったから、ちょっとびっくりした。レックスってすごいって話で盛り上がってたんだぜ!と友人が笑う。正直お前一人で盛り上がってただけだろ、と突っ込もうかと思ったけどめんどくさそうだったからやめた。沢村も何か言いたそうだし。

「いや、オレのじいちゃんがよく言ってたからなんか覚えてるんだけどさぁ。レックスってすげー悪い奴だったんだって」

悪い奴だった、沢村のその言葉が最初信じられなかった。友人もそんなの嘘だろーとか言ってるけど、沢村は真面目な顔をしている。それがとても嘘を言っているような顔に見えなかった。難しいこといっぱい言ってたからあんまよく覚えてないんだけど。沢村はそう言ってからまた話し始める。

「レックスがいなかったら、海道先生がこの世界をもっと良いものにしてくれたのに。とかさ、アイツが先生を殺したんだ。とか、そんな感じのこと言ってたんだよじいちゃん」

「人殺し!?」

「詳しいことはわかんないけどさー。すっげー何回も聞かされたから忘れられねーんだ」

初めて聞いた、衝撃的な事実にオレは呆然とする。父さんが、人を殺した?そんなの、嘘だろ?そう信じたいのに、信じきれない。だってオレは父さんのことを全然知らないんだ。知らない人のことを、どう信じればいい?
よくよく考えれば母さんも、拓也さんも、あまり父さんの話はしてくれなかった。してくれなかったんじゃなくて、出来なかったんじゃないか。人殺しの、奴の事なんて…どうやって話せばいい?そう考えるとレックスが、父さんが悪い奴だったって話の方が信じられる。沢村の言葉が正しく聞こえる。

「おいレン、大丈夫か?顔色悪くねぇ?」

「だ、大丈夫だよ!ちょっとびっくりしちゃってさ」

無理やり顔に笑顔を張り付けて、オレは笑った。もし、オレがレックスの息子だって言ったら…こいつらはオレから離れていくんだろうか。そう思ったらぞっとする。レックスの息子だって、言わなくて良かった。もしそれを言ってたら、きっとみんなオレを見る目が変わるだろう。
用事思い出したから帰るな!とオレはこの場から逃げ出すように走り出す。怖かった。ただひたすらに怖かったんだ。ふとしたきっかけでオレがレックスの息子だって、分かる時が来るかもしれないから。Gレックスを持ってることが、父さん…レックスと繋がりがあるって考えられそうで。もらった時はあんなに嬉しかったGレックスが、きらきら光って見えたGレックスが、今はすごく重く感じる。





拓也さんに、母さんに、父さんは悪い奴なんかじゃないって、そう言ってもらいたい。そうしたらきっと、オレは父さんの事信じられると思うから。

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沢村くんは沢村宗人さん(いちご鼻の人)のお孫さん
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